資本構成のステップ 最適資本構成

■資金の余剰、不足額の推定
事業計画をまず作成する。期間は5年程度。なるべく長期間に必要な資金を集められればよいが、一気に資金調達は無理。増資であれば希薄化の可能性があるし、社債であれば無駄な利息を払うハメになる。かといって資金調達は、面倒であり、また証券会社に手数料を支払う必要があったりで、なるべく回数は少ない方がいい。このようなバランスから5年程度が一般的。

事業計画(財務計画)は、やはり定性分析にのっとったものでなくてはいけない。財務計画は売上原価などいろいろな項目がありどうしたらよいかわからなくなる場合があるが基本的に、売上高をまず決定し、その他の項目は売上高比率で自動的に決定すればよい。その時、過去からの推移。競合と比較をし変化させるならその理由を説明できなければいけない。売上高成長率も、市場成長率よりも高い(シェアアップ)ならばその理由がなくてはいけない。いつもチェックするのは、売上高成長率、最大コストの売上高比率、営業利益率、総資産回転率、あたりか。ここが不自然でないかチェック。

BS、PL、CF計算書のすべての項目を作成できれば望ましいが、今のイシューは資金の余剰、不足を見積もることだからそれに必要でない項目はとりあえずほっておく。また、事業に関係ない有価証券の売却益などは、別途計算するので本業に関わる項目だけでよい。

事業から得られるCFと事業への投資CFの合計は、以下の通りに計算できる。ここでは、この項目を営業FCFと呼ぶ。アカウンティングであればこれに支払利息や配当の支払いも含める必要があるがここでは別に計算する。こっちの方がファイナンス的でわかりやすい。

営業FCF=営業利益+減価償却費ー税金ー運転資本の増加額―設備投資

で算出できる。

次に、財務の返済と支払利息と支払い配当金をここからマイナスする。

資金の余剰(or不足)=営業CFー支払利息ー配当金ー債務の返済

この値を5年算出し、その累積がマイナスであればその金額を少なくとも外部から調達する必要がある。ただし、配当金はこちらでコントロールできるので、払い過ぎと思うのであれば減額して構わない。ただし減配を大きなマイナスのシグナル効果を伴うのでしっかりと説明する必要がある(成長のための一時的な減配である、とか)。


■格付けの決定
なぜ格付けを重要視すべきかというと、特に社債の調達に大きな影響を及ぼすから。重要な投資家である機関投資家は投機的と見なされるBB以下はルール上ポートフォリオに組み込めない場合が多い。

よって、実質的にBBB異常を目指すことになるが、ここは資本コストが重要となる。BBB以上であればAAAとBBBで利率はそれほど変わらない。従って、あえて負債を減らしAAAにしたところで、節税効果のロスというデメリットの方が大きい場合が多い。

格付けに影響を与える指標は多い。自己資本比率、インタレストカバレッジレシオ、営業利益率、売上高の規模、その他のカバレッジ。これらのどの指標を重要視するかでBBBになったりBBになったりする。業界にもよるが一般的にインタレストカバレッジが最も重要視されると言われている。従って、少なくともインタレストカバレッジが規定値を上回っていることは必須であろう。

ただし、これらは業績が計画通りに進んだ場合である。資本コスト最小化の視点に立てば、BBBとBBの間がベスト。ただし、業績が悪化したらBBの領域に入ってしまい、ジャンク債となってしまう。よって、自社の事業の業績のリスクを考慮してある程度余裕を持って計画することが必要である。その結果資本コスト最小化のポイントを外したとしてもそれでいいのである。新規事業のための資金調達であればかなり余裕が必要かもしれない。

■資本構成の決定
最初のステップで、資金不足が発生しているのであれば、配当の減額、外部からの資金調達が必要である。いくら調達したらいいのか、どうファイナンスしたらよいのかを格付けをシミュレーションしながら決めていく。全額負債にしたら自己資本比率はどうなるか、インタレストカバレッジはどうなるか、半分増資で調達したらどうなるか、と適当に数字をいれて雰囲気を把握する。

どうしても目標格付けが難しいのであれば、設備投資を縮小することも考えなくてはいけない。ただここも経営戦略、課題に照らし合わせて、どうしても設備投資を下げられないのであれば、なんとか増資を増やしたり、配当ゼロも香料していく。


■ダウンサイドでのシミュレーション
よくベース、ダウンサイド、アップサイドの3つを考量する場合が多いが、はっきりいってアップサイドはいらない。最も最悪の場合にどうなるか、自社は耐えられるか、が重要なのである。ではダウンサイドをどう定義するかであるが、どのコストをいじってもいいが、単純に営業利益率を過去最悪の場合にした場合でもよいかもしれない。また競合他社の最低水準の場合でもいいかもしれない。どうなれば格付けがBBになり、どうなれば債務超過になるか、といった視点からの分析の方がいいかもしれない。このような分析をストレステストと言うが、ダウンサイドと分けて行う場合もある。


■意思決定
定性と定量のバランスが重要。単純に格付けを目指しても無意味。自社の課題は何か?なぜ資金調達をするのか?しないと戦略にどう影響するのか?なぜ今なのか?株式市場は増資に向いているか?来年じゃだめなのか?なぜ格付けBBが怖いのか?非上場で良い企業もある。株主へのシグナル効果は重要視すべきなのか?マイナスシグナルがあるとしたら、解決する方法はないのか?

総合的に考え、今重要なのは何か?を考えて意思決定する必要がある。
by km_g | 2011-02-15 18:40 | ファイナンス