税効果会計 1

一時差異とは、税務会計と財務会計の認識の時期のズレである。この時期のずれというのがポイント。時期に関係ないずれは永久差異と呼ばれる。税公会計の対象となるのは、一時差異であり、永久差異は対象とならない。

税効果会計の方法には2種類ある。繰延法と資産負債法である。

繰延法は、PLに重きをおいた計算法で期間差異が生じた年度の税引き前利益と税金費用の対応を優先する。税率が変更された場合、変更があった年度にその都度対応するだけ。要は、単純に収益ベースでズレを計上しそのずれを資産計上する方法。税率が変更されたとしても、その差異が発生した年度は、修正されるが差異の解消年度には資産の額と、PLでの修正額が異なってしまう。

一方、資産負債法はBSに重きをおいた計算法で、一時差異が生じている期間全体(過去も含めて)に渡って、ズレを調整する方法。税率が変化した場合、繰延税金資産の資産性が変化してしまうので、税率が変更された年に資産の評価変えを行い。その結果として、税金費用と税引前利益の対応が崩れてしまう。

例を上げる。
まず繰延法。

売上100
費用①50
費用②30
税引き前利益20

とする。この年、費用②の30が損金不算入(一時差異)だったとする。
従って、課税所得は50となる。実効税率が40%だとすると、税金要納付額は20となる。
財務会計ルール(税引前利益の40%が税金費用である)では、税引前利益×40%=8が税金費用となるべきなので、12のズレが生じる。このズレを解消するのが税効果会計である。

繰延税金資産12/税金等調整額12

という仕訳を行う。12=ズレ額×税率40%。一時差異であるので将来この費用②30は税務上損金に認められる。その時は、税金を財務上の税金費用より少なくすることができる。つまり、この12は資産性がある、と考えることができる。

この年(差異発生年度)
売上高100
費用①50
費用②30
税引前利益20
法人税等20
法人税等調整額-12
法人税8
当期純利益12

なる。

(差異解消年度)では、
売上高100
費用①50
税引前利益50
であったとすると、税金費用は
50×40%20であるが、この年費用②30が損金に認められたとする。すると、課税所得は20となり、税金用納付額は8となる。損益計算書は、

売上高100
費用①50
税引前利益50
法人税等8
法人税等調整額 12
法人税等 20
当期純利益30

となる。

ここで、解消年度を前にして税率が30%に変更したとする。

繰延法の場合、特にすることはない。一時差異がその年度にも発生したならば、差異の額×30%で資産計上なりをすればよい。

しかし、資産負債法は異なる。資産計上されている繰延税金資産12は、将来の費用②30が認められた時、どのくらいの税金額が削減されるかは、その年の税率のよる。12は税率が40%だった場合の税金削減額であるから、30%になったならば費用②30は9の税金削減の効果しかない。つまり、繰延税金資産12はすでに12の資産性はなく9の資産性しかない。従ってこの3を評価損として、費用として計上する。これが資産負債法である。

逆に繰延法では、9の価値しかない繰延税金資産12がずっと計上されたままになってしまう。費用②30が解消され、9の資産繰戻しがあった場合、永久に3の繰延税金資産が残ってしまう。ただ、評価損はないため、PL上でよくわからん費用が突然計上されることはない。

世界の流れとして、資産負債法に流れている。日本は資産負債法である。IFRSはBS重視の会計方法である。今後はいろいろなところでBS重視になっていくだろう。これは、おそらく、不確実性が高まった結果、今、より将来を重視する傾向の表れでないかと思う。

最後に、キャッシュとしてはどちらの方法でも違いはない点は注意である。
by km_g | 2011-06-01 21:12 | MBA他