企業のバリュエーション DCF法

  • DCF法とは
DCF法をとは、Discount Cash Flow 法の略で、いろいろな企業価値算定方法がある中で最もファイナンス理論に基づいた企業の価値を算出する方法である。DCF法における企業価値の定義は、「企業の価値はその企業が生み出すCFの現在価値 、である。どれだけ資産を持っているか、どれだけ従業員がいるか、どれだけ歴史があるか、どれだけ税金を収めているか、など価値は誰の立場で考えるかで様々な定義が可能である。しかし、ファイナンス理論ではその中で最もフェアで定量化可能なキャッシュ・フローをベースとして企業の価値を定義する。

企業価値=企業が生み出すCFの現在価値
  • 企業価値と株主価値




  • 株主偏重ではない
よくある誤解として、ファイナンス=資本主義は株主のためにあり、従業員やその他を無視した悪い考え方だ!という点だ。しかしこれは誤解だ。




ゼロ:財務諸表を用意。
有価証券報告書から財務諸表を読み取る。企業によっては単体と連結の二つがあるので注意。使うのは連結の法でよい。減価償却費はキャッシュフロー計算書から読み取る。また設備投資は、資本的支出という名前で財務諸表のちょっとあとにのっている。検索で探せば一発。


①FCFを計算する。
減価償却費、設備投資、運転資本、PLからFCFを計算する。運転資本には、現金を含めない。


②株価情報取得とWACC計算
発行済株式数、株価を取得する。ヤフーファイナンスなどが便利。
βについてBloombergからもらえる。

割引率に用いるWACCを計算する。この時、D/Eを計算する場合、全て時価で計算する。理由は簿価は過去の数字だからこれからを考えるファイナンスにおいて重要性が小さいから。


③事業価値計算
今回は、財務予測を一定成長と仮定して特に作らなかったが、ほんとはここが一番大変。一般的には5年はPL、BSを丁寧に作成して、それ以降を残存価値とする。永続成長率は重要な変数。

また、割引率はWACCを使用した。APV法であればRaを使用しないといけない。今回は、成熟企業のように安定的な状態を仮定しているのでWACCで問題ない。有利子負債が大きく変動するようであれば、APV法を使う。

④理論株主価値計算
事業価値を計算したら、時価ベースのBSを作成する。資産側については、事業と関係ない資産があれば別途足し上げる。ここでいつも議論になるのが現金の取り扱い。ここの現金を運転資本に含めるべき(つまり、事業で使うと考え、別途足しあげたりしない)という考え方と、現金は事業と無関係なので、事業価値とは別途分けて足しあげないといけない、という考え方だ。正確には前者が適切であると思われるが、実務上どのくらいの現金が事業に使われていて、どのくらいの額が事業と無関係であるか、納得感が得られにくいので、現金は全て別途足し上げるのが普通。

負債側については、有利子負債と運転資本、その他の株主以外に帰属する価値、に分けて把握する。株主以外に帰属する項目は、退職給付引当金などである。これは、差し引かないといけない。

結局、

株主価値=事業価値+現金-有利子負債-株主以外に帰属する項目

となる。

⑤感度分析
永続成長率と割引率を前後1%程度変化させて、結果の振れ幅を把握する。


⑥マルチプルで計算結果をチェック
得られた結果のマルチプルを計算する。PER,PBR、EBITDAで十分。これらを現状の市場の値と比較して、大きく乖離していないか、現実的か、チェックする。大きく外れている場合は、自分の計算を疑う。市場は意外に正しい。

DCF法によるバリュエーションはだいたい、こんな流れ。



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by km_g | 2011-11-08 12:04 | ファイナンス