大企業の新規事業の取り組みで一番気になるところは、(社内)起業家個人の議論が抜けすぎてるところ。

外のスタートアップ、VCからすると、まずどういう起業家なのか、そして起業家へのリスペクトがある。
が、大企業内の新規事業をスタートアップモデルで立ち上げの取り組みは、仕組みだったり、評価基準の話題がほとんど。

背景にあるのは、誰がこの事業をやるのか、というところの重要性が理解されてないというシンプルな点と、立ち上げる社内起業家が若手で「部下」のような人なので、リスペクトより評価っぽいスタイルになってしまう、というごとだろう。

ここが変わらないと。

# by km_g | 2022-10-15 11:24

CVCの意味

最近CVCの設立が増えている。ただ、その目的通りにワークしているか、するかやや疑問。

まず作る目的は、たぶんこんな感じ。
1:スタートアップとのコネクションを作りたい(投資マネーがあればつながれる)
2:意思決定を早くするために、別組織
3:報酬体系も柔軟にしてイケてるキャピタリストが採用できる
4:事業部のM&Aのきっかけ
5:スタートアップ界隈の最新情報収集

オープンイノベーションなり、スタートアップのイノベーションを取り込む目的としての設定は悪くない。
しかし実際はどうなるか、なっているかというと、

・ベンチャー投資の経験がないメンバーのため、ババ抜きの被害に
・事業部側がどんなスタートアップ、組み方の方針がないため、結局どんなスタートアップ、どんな連携をベースにすればよいか不明で、投資までの意思決定が長くなる(まずは連携をして味見をしてから投資しましょう)
・かといってイケてるキャピタリストを採用すると、ファンドビジネスの方を向きすぎてしまい(財務リターン最大化)、事業部とのシナジーはほぼ気にせず、投資したいスタートアップに投資し、スタートアップ視点になってよい連携先がライバルであればライバルとの連携を進めてしまう
・数兆円の事業規模の会社であれば、10年で100億円のリターンが出たところでほぼ意味がなく、CVC組織はさらに浮いてしまう。

たぶん、こんな感じだろう。

さてどうしたらよいか。何が問題か。

こういうスタートアップ、こういうイノベーションがほしいという事業部側の要望が明確になったとしたら、もはやCVCなど使わなずに自分で探せばよいと思うし探せると思う。そしてwin-winであるならば、エクイティを出さなくても話は聞いてくれるし、連携してくれるはず。なのでその場合はCVC不要。

そういう方針が決まっていない。またはその外のセレンディピティを期待するのであれば、独立しすぎてしまうかもしれないCVCの状態は、しょうがないとあきらめて、事業部から積極的にCVCチームに情報をとりにいかないといけないかもしれない。広くLPするというのも悪くないかもしれないが、おそらくほぼ情報は得られないだろう。

CVCの資金を少なくとも最初は全額事業部が出すはずなので、投資方針や投資基準、戦略はしっかりにらみをきかせられるはずなのでそこはしっかりやった方がよい。
そして、事業部側の目的がセレンディピティにあるのであれば、CVCは、最近はやりの集中投資などせずに、幅広く投資、が良い気がする。

ただ、そういうイケてるVCがとっている、リードをとって集中投資、みたいな方針にあこがれるキャピタリストは採用できないかもしれない。ちょっとかじっただけの人にリード投資のようなスタイル任せてしまうと、それこそババ抜きの被害にあうだろう。

このあたりが難しい。事業部に近いが、ある程度独立性を持たせた組織にして、キャピタリスト経験のある人を事業部側に採用するのが良い気がする。


CVCについてはこの本が勉強になる


# by km_g | 2022-10-13 19:40

VCの顧客は起業家

 VCの競争はどんどん激しくなっている。採用支援、専門家紹介、潤沢なお金などなど。その中で、VCはどう差別化していくのか。普通のビジネスであれば基本だがちょっと忘れがちなのが、VCが気にすべきは、起業家という顧客。起業家が顧客であるということ。

その顧客である起業家に対して、どう差別化するのか、できるのか。どんな提供価値を提供するのか。当然どのVCも考えているだろう。しかし、差別化しているつもりが似たようなアクションになってしまっているところが多い気がする。

そうならないために、これも通常ビジネスの基本だが、顧客である起業家にヒアリングしているだろうか。

違うVCから調達した起業家には、
・うちにたいしてどんなイメージをもっているか?
・なぜうちに一番に声をかけてくれなかったのか?
・なぜうちのオファーより違うVCのオファーを選んだのか?
・投資依頼をするとき何番目に思い浮かべるか?なぜ1番ではないのか?

投資を受けてもらった起業家には、
・なぜうちを選んだのか?
・どこにメリットを感じたのか?
・どこを重視したのか?
・どこと比較したのか?

このヒアリングを意外にやっていない気がする。そこから、自分たちで認識している強み、ポジショニングがその通り起業家に伝わっているのか。もしかしたら意外にどうでもよいと思っていたところを評価してもらってるかもしれない。
その結果を踏まえて、VCの競争戦略、差別化戦略を考えていけば、もう少し色の違うVCが増えてくるかもしれない。


ということを↓の動画を見てふと思った。



この本もご参考





# by km_g | 2022-09-28 18:46

会社の次の柱を作る、という目的であれば、社内新規事業よりも外部スタートアップとの連携、買収が良いと思う。理由は効率。
多くの事業会社もそう思い、いろいろ活動をしているがちょっと遠回りしてる感を感じる。

スタートアップとやらがよくわからない、知らない、会えないということで、アクセラをやっているところを多く見る。自社でアクセラは大変なので、外部のアクセラ屋さんに委託し、ウェブサイトからイベントの仕切りまで数千万円で依頼する(アクセラ屋さんはテンプレだから最初は大変だけど良い商売。)
相手もプロなので立派なイベントになり、スタートアップとの出会いの機会も増えるので良いこともあるが、ただ継続しているところは少ないのがもったいない。
この継続が実は重要。毎年変わってしまっていては、スタートアップとネットワークを作っていけない。外部に委託してもよいが社内のコア担当者はスタートアップと委託業者と一緒にコミュニケーション、戦略ディスカッションに入り込まないといけない。

またCVCも中途半端になりがち。5%程度のシェアで何の意味があるのか。事業連携というVCにはできないバリューアップができるのだから、そして目的なのだから事業連携をするか、M&Aをして支配権をとればよい。なぜそうしないか。事業会社とスタートアップの連携をどう進めていけば、どうすればよいかわからないから。なのでとりあえず出資して関係性をもち、VCの真似事みたいなことをする。なので、バリュエーションのババ抜きにされてしまうことも。

CVCのように、別の法人を作り意思決定速度や、優秀な人材の確保などを実現すること自体は良いと思う。要はストラテジックのところをしっかり考えないと、ということ。あるCVCは「親会社とは独立して、独立VCのようにフィナンシャルリターンを第一に目指します」と言っていた。なんじゃそれは。

# by km_g | 2022-09-06 08:42

大企業の新規事業

新規事業で課題となるのが、規模と出口、チーム。

  • 規模
社内新規事業の課題は立ち上がったは良いがその後どうするか、のところ。社内でテーマを公募し1年かけて、外部の方に手伝ってもらい事業計画を作る。出来上がった計画が3年目10億円、5年目50億円、だったとする。スタートアップであれば十分すぎる計画だが、例えば数兆円の売上がある大企業の場合、へなちょこに見えてしまう。

  • 出口
そこそこの計画ができたとしてその後(出口)をどうするか。
1:既存の事業部で受け持つ
既存の事業部とのPMIは要注意。またそもそも新規事業の方向性として既存事業をディスラプトする内容が求められていたりするとPMIは無理。また、既存事業を強化する事業は「新規事業」なのか?ということでそもそもの新規事業のテーマ設計段階が重要。

2:新規事業部として立ち上げる
規模の問題をクリアしたとして、その次段階は社長コミットが重要。しばらくは既存事業の社員に遊んでいると思われ、邪魔まではされないだろうが積極的な応援、支援は遠い。実績を出し続け、「あれ、面白そう」と思ってもらえるまで社長がコミットし続ける。

3:カーブアウト
新法人の立ち上げ。機動性アップ、しがらみ排除などメリットある。また、上記規模の問題もクリア?できる。
ただし、大方針を決めないと資本政策など決められない。報酬体系や意思決定プロセスなどを既存事業と無関係に決めたいだけなのか、完全に独立させるのか。
カーブアウト元がシェアをほとんど持った資本政策で「独立」はありえない。資金調達もできない。がそういう資本政策になっているところをよく見る。背景は方針。独立させるなら(元社員だった)代表に100%に近いシェアをもたせるくらいでないといけない。事業会社側創業時の現物出資としてある程度のシェアで止める。

  • チーム
メーカー等の場合研究所の研究員の技術ネタを元に新規事業をやります、と始まるケースが多いだろう。これはスタートアップの場合でも同じだが、ビジネス側の人材がコミットしていないチームはなかなかビジネスが立ち上がらない。しかし、大企業内の新規事業立ち上げの場合、市場規模やプロダクトの方に意識がいってしまい、「誰が中心としてやるのか」という視点が抜け落ちている。ある程度しょうがないが。
ちなみにカーブアウトの場合、社内人員が退職して新会社にうつるのか、というところは大きな分岐点だろう。ただ、社内だけでチームを作る必要はなく、新会社社長等を見つけてくるのが早いかもしれない。


社内新規事業、の目的はイノベーション、新分野への進出、会社の成長、人材育成などなどあるだろう。人材育成の観点でやるのであればいいが、「会社の次の柱を立ち上げる」ということであればやめた方が良い気がする。別で書くが、外部スタートアップと連携、買収が効率的と思う。



# by km_g | 2022-09-06 08:30