医療機器にするべきか?

 最近というか少し前からデジタルヘルスの分野が盛り上がっている。生体情報、生活情報を利用して病気の予防・診断や、MRI画像をAIで・・、などなど。その中で、必ず気にしないといけないのが、医療機器として製品化するかどうか。手術ロボットやカテーテルなどは、明らかに医療機器に該当するので、その点は問題にならないが、このデジタルヘルスの分野は微妙だ。医療機器にするかどうか、選べる可能性があるからだ。

ところで医療機器の定義は、下記の通り。

医療機器とは、人若しくは動物の疾病の診断、治療若しくは予防に使用されること、又は人若しくは動物の身体の構造若しくは機能に影響を及ぼすことが目的とされている機械器具等であって、政令で定めるものをいう。


①診断や治療を目的としている
②機能や構造に影響を与える

このいずれかであれば医療機器というわけだ。

 デジタルヘルスの分野を大きく分けると下記の3つ。
  1. 予防 
  2. 診断 
  3. 治療 
 この中で、医療機器性が出てくるのは、2.診断と3.治療の領域に入った場合。運動量や心拍など生体情報をモニタリングしてグラフ化するまでは良いが、病気のアラートを出すと診断の可能性が生まれ、医療機器性が出て来る。そこまでやるかどうか。最近では認知行動療法が浸透し、ソフトウェアでも治療まで行える可能性が出てきた。要はそこまでやるかどうか。

 ところで、医療機器として製品化するのとしないのとでは何が違うのか。メリットとデメリットを少しあげると下記の通りだろうか。

メリット
・医療効果を言える(差別化、マーケテイング)
・診断、治療といった付加価値の高いビジネスが可能
・保険診療となった場合、国から費用負担が得られる

デメリット
・臨床試験等の手続き負担(カネ、時間)
・販路が制限される

 日本の場合は、コンシューマー向けの予防はマネタイズしにくい(健保や保険と組むとうまくいきそうだが)。また、参入障壁が大きくないため、このデジタルヘルスの分野には多くのプレイヤーが参入してきている。その中で、この医療機器の領域に入るかどうかは大きな戦略判断だろう。



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ちなみに、こんなプログラムは医療機器、こんなプログラムは医療機器ではないよ、参考例が公開されている。
http://www.jaame.or.jp/mdsi/program-files/261114.pdf
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これらは医療機器

(1) 医療機器で得られたデータ(画像を含む)を加工・処理し、診断又は治療に用いるための指標、画像、グラフ等を作成するプログラム
① 診断に用いるため、画像診断機器で撮影した画像を汎用コンピュータ等に表示するプログラム(診療記録としての保管・表示用を除く)
② 画像診断機器で撮影した画像や検査機器で得られた検査データを加工・処理し、病巣の存在する候補位置の表示や、病変又は異常値の検出の支援を行うプログラム(CADe(Computer-Aided Detection))
③ CADe 機能に加え、病変の良悪性鑑別や疾病の進行度等の定量的なデータ、診断結果の候補やリスク評価に関する情報等を提供して診断支援を行うプログラム(CADx(Computer-Aided Diagnosis))
④ 放射性医薬品等を用いて核医学診断装置等で撮影した画像上の放射性医薬品等の濃度の経時的変化データを処理して生理学的なパラメータ(組織血流量、負荷応答性、基質代謝量、受容体結合能等)を計算し、健常人群等との統計的な比較を行うプログラム
⑤ 簡易血糖測定器等の医療機器から得られたデータを加工・処理して糖尿病の重症度等の新たな指標の提示を行うプログラム
⑥ 一つ又は複数の検査機器から得られた検査データや画像を加工・処理し、診断のための情報を提示するプログラム(例えば、眼底カメラ、眼撮影装置、その他眼科向検査機器から得られた画像や検査データを加工・処理し、眼球の組織・細胞や層構造について、形状・面積・厚さ・体積・濃度・色等を表示、形態情報との相関比較を行うプログラム)

(2) 治療計画・方法の決定を支援するためのプログラム(シミュレーションを含む)
① CT 等の画像診断機器から得られる画像データを加工・処理し、歯やインプラントの位置のイメージ画像の表示、歯科の矯正又はインプラント治療の術式シミュレーションにより、治療法の候補の提示及び評価・診断を行い、治療計画の作成、及び期待される治療結果の予測を行うプログラム
② 放射線治療における患者への放射線の照射をシミュレーションし、人体組織における吸収線量分布の推定値を計算するためのプログラム(RTPS(放射線治療計画システム))
③ 画像を用いて脳神経外科手術、形成外科、耳鼻咽喉科、脊椎外科等の手術をナビゲーションするためのプログラム
④ CT 等の画像診断機器で撮影した画像を加工・処理して、整形外科手術の術前計画を作成するためのプログラム
⑤ 画像診断機器や検査機器で得られたデータを加工・処理し、手術結果のシミュレーションを行い、術者による術式・アプローチの選択の支援や、手術時に手術機器で使用するパラメータの計算を行うプログラム(例えば、角膜トポグラフィ機能をもつレフラクト・ケラトメータで取得した角膜形状データを基に、屈折矯正手術における角膜不正成分を考慮した手術結果のシミュレーションを行い、レーザの照射データを作成するプログラム(屈折矯正手術レーザ照射データ作成プログラム))
⑥ 患者の体重等のデータから麻酔薬の投与量を容易な検証ができない方法により算出し、投与を支援するプログラム
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# by km_g | 2017-10-09 12:34 | 日常

CVC

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CVC=Corporate Venture Capital設立のニュースをちらほら見るようになってきた。

三井不動産が50億円のCVCをグローバル・ブレインと共同で設立
オムロンとリコー、VC育成で共同ファンド 50億円規模

CVCの目的は大きく二つあるが、多くのCVCの目的は戦略的リターン=オープンイノベーションだろう。

  • 財務リターン
  • 戦略的リターン

次に問題になるのが活動形態について。

1:社内CVC
これが本来のCVCだろうか。Intel capitalはこの形態だと思われる。

 ●メリット
 ・コントロールがしやすい
 ・親会社によるベンチャー支援がしやすい
 
 ●デメリット
 ・意思決定が遅くなりがち 大企業の意思決定システム 
 ・投資に素人の社員が投資ができるか?(人事ローテ問題)
 ・失敗投資の処理が難しい


2:社外VC設立(2人組合)
銀行系VCは主にこの形態。

 ●メリット
 ・別の意思決定システム導入可能
 ・専門キャピタリストが採用可能(給与体系などを独自に設定可能)
 ・「ファンドへの出資」形態と比較して、コントロールがしやすい

 ●デメリット
 ・ファンド管理が面倒
 ・人事ローテ問題
 ・出向者とプロパーの扱い、区別
 ・本体との連携が手薄に?


3:ファンドLP出資
外部の独立系VCにLP出資する形態

 ●メリット
 ・プロキャピタリストのノウハウ獲得可能
 ・質の良い情報ソース
 ・財務的リターンが期待できる

 ●デメリット
 ・LPシェアが少ない場合情報が得られない。ただの財布に。
 ・VBへのコントロールがしにくい。オープンイノベーションにつながりにくい


理想的には、3の形態から初めてVCのノウハウをため、1の形態に以降するのがいいと思う。しかし、日本企業の問題は給与制度の問題が大きくて中途半端な2の形態にせざるを得ないと思われる。
この場合、プロのキャピタリストの獲得は必須であると思われるので、せっかく別会社にするので、思い切った給与システムを導入するべきだ。

最近、1の形態から初めて、ソーシングや目利き、VBの取り扱いなど本来ベンチャーキャピタリストが担う機能をアウトソーシングしている事例も見られる。01ブースターは森永製菓と組んで新規事業開発からVB投資補助などを行っているようだ。また、3の形態でも事業会社とプロのVCと2社または少数のLPで共同でファンド設立する例もあるようだ。これは、コントロールも効くし、良質なVBとの接点も確保できる。ただし、トップティアのVCがLPの過半数をある事業者に持たせることはなく、LPが集まらない2流のVCと組むケースにならざるを得ないかもしれない。この場合、成功の確率は不確実になるかもしれない。一方、2流のVCはこのようなCVC支援事業?は良い飯の種になるかも?

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# by km_g | 2016-03-06 23:49 | VC

Sequoia capitalのベンチャー企業に求める資質_e0194027_21171234.jpg




Clarity of Purpose
事業の目的がはっきりしていること

Large Markets
市場が大きいこと。

Rich Customers
リッチな顧客層

Focus
顧客の購入する価値のあるものを生み出すことに集中

Pain Killers
顧客の差し迫った問題、ニーズを解決する策を提供せよ

Think Differently
一般的な考え方から脱せよ

Team DNA
企業のDNAは最初の90日間で決まる。優秀なチームであれば、優秀な人をひきつける

Agility
機敏であること。

Frugality
倹約せよ。

Inferno
少ない資金で始めよ。それによって規律よ集中力が生まれる。


# by km_g | 2016-03-01 20:37 | VC

重いテック系VCが増えてきた_e0194027_21204920.png

これまでは、IT系のベンチャーやベンチャーキャピタルが話題に上ることが多かったけど、昨年から大学に紐付いたベンチャーキャピタルだったり、メーカーと既存VCが組んでなんかやる、みたいなニュースが目に入るようになってきた。

大学発ベンチャー 投資資金が拡大

大学発ベンチャー、育成ファンド1000億円に 1年で2.6倍


背景にあるのは、産業競争力強化法とIT系のベンチャー投資が競争激化しており、儲からなくなってきたことがあると思う。特に後者の要因は、調達金額があまり多くないため、少数のVCのみで抱えるケースが多く、結果特定のVCに成果、案件が集中してしまい、その他はバリュエーションが高かったり、フォローで少額でしか投資できなかったり、とあまり儲からない。なので、テック系だ!となっているんだと思われる。

しかし、この分野はこれまで失敗続きだった。要因は、

  • 長い期間に耐えられるまとまったカネが投資されてこなかった。
  • 技術評価に目が行き過ぎで、技術が良ければベンチャーとしてオーケーとなり、経営能力、チームが未成熟だった。
  • 自前主義。アライアンス能力不足。
  • 投資家側に最低限の当分野の技術の素養がない。

この4点が解決すれば十分に日本からもテックベンチャーが量産されると思う。最近のテック系投資家がこれらを全て備えているか、が成功のカギだと思う。

大学に紐付いたベンチャーキャピタルは、カネについては十分だと思うが、2点目が不安な気がする。また、ガバナンス面も不安である。大学からの世話になっている教授への投資を依頼されてフェアに評価できるか。

民間系テックVCはカネとソーシングが課題と思われる。バイオと同様にテック系は長い潜伏期間となる場合が少なくない。ここは民間マネーには耐えられない。なので、ここは、大学VCやNEDOやJSTの補助金をうまく使うことが有効だと思う。次にソーシング。大学やその他技術シーズは商業化する意識が薄いこともあり、情報発信していないことが多い。リソースが少ない民間VCは拾いきれないかもしれない。大学や産総研などの研究期間、TOLと連携して案件を継続的に紹介してもらう体制構築が有効かもしれない。

↓はテック系VCリスト。昨年から一気にファンド組成されているのがわかる。2016年から来年にかけて一気に投資ラッシュになると思われる。
どこが一歩ぬけだすだろうか。

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# by km_g | 2016-02-27 13:09 | VC

案件からの学び

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昔コンサルを志望した時、いろいろなプロジェクトに関わるとこで、いろんな業界、企業について詳しくなれるのがいいな、と思っていた。本や記事を読んでもいいが、やっぱり実務からの学びが一番。

今、VCになってこの仕事も同じように学べてるな、と気付いた。しかも、その業界の常識を打ち破ろうとしている優秀な経営者自らがプレゼンしてくれる。非常に、恵まれた、ラッキーな環境にいれてる。

一件、一件丁寧に話を聞かないとな。もったいない。



# by km_g | 2016-02-19 18:14