スタートアップに限らず経営者は孤独でプレッシャーの中で舵取りしないといけない。のでこういうメンタルケアは非常に重要。
が、たぶんこれだと根本原因が解決しないと思う。特にスタートアップの場合は。

原因は事業がうまくいっていないこと。そこにメスをいれずにメンタルはおそらく治らない、解決しない。
経営者がこういう状態になってしまっているとすると、もうその事業はダメだろう。手遅れ。交代してもダメ。

なので事業をちゃんとクローズする、またはM&A EXITが一番の解決策。それができる人を見つけてきて(VCが肩代わりして)そして経営者は休む。
そうでないと経営者は休めないはず。

最近、少額のM&Aが目につくようになった。




明らかに軟着陸EXIT。皮肉っぽく聞こえそうだが非常に良いM&Aだと思う。この意思決定と完了させた経営者、VCはすばらしい。

いずれにせよ、これがうまくいかなくなってしまった、メンタルを病んでしまった経営者向けの一番やらないといけないソリューション。
メンタルケアだけしてもダメ。休めるわけがない。

こういう少額M&Aの障害なるのが参加型優先受領権。
少額だろうがM&Aの場合、優先受領権をもつVCが数億円ピンハネをする(この時点で会社にも経営者にも1円も入らない)。

例えば下記のケースを考える。

買収予算 5億円
買い手は51%のシェアがほしい
VCsは1倍の参加型の優先受領権を保有。その金額合計は3億円分。
経営者70%シェア
VCs30%シェア
会社は瀕死の状態。会社にも出資をしてほしい。増資。1億円は最低限。

1:3億円VCsがピンハネをする。買い手の予算は残り2億円
2:増資1億円
3:残り予算1億円で、VCの持ち分と経営者の持ち分を買い取る。VCsはEXIT局面なので少なくともVCs分は全部売り切りたい。これまでのシェアというよりここで誰がどのくらい売れるか(泥舟から降りるか)という争いになる。
4:VCは経営者の持ち分に対してタグアロングや経営者の持ち分売却に対して事前承認権があるので、この局面でVCsに逆らえない。
5:経営者のEXITはほぼなし。買い手も経営者の持ち分全部売却は嫌がる。
会社に残る経営者は会社への資金を減らすわけにはいかないので、自身の売却は優先度が下がってしまう

という感じで少額M&Aで軟着陸するためにはVC側の協力が不可欠。VC協会の上の方にこんな局面でもナニワ金融道バリに資金回収する人もいる。ある意味本当に尊敬する。VCは所詮金融。


このあたりは別で書くとして、言いたかったことは経営者のメンタルが病んでしまった時はメンタルケアはもちろん大事だが事業側・会社側にメスをいれることを忘れてはダメ、ということ。





# by km_g | 2023-08-13 11:31

固定費はリスク

固定費と変動費。MBAのときは損益分岐点の計算で意識する程度の理解だったが、固定費=リスクと改めて理解した。

何か事業を始める時に、何を買うの?という視点は持ってたつもりだったが経常的な費用(〜人件費)にどのくらい使うのか、という視点をあまり重視してなかった。
その事業がもしうまくいかなかった場合のリスクはまさにこの固定費部分。特に社員を首にできない日本企業の場合は特に。

リスクの高いスタートアップや大企業の新規事業の場合、何かの業務を固定的な費用ではなく変動費的な費用でできないか、というのはこれまであまり気にしてなかったが今後気をつけよう。

# by km_g | 2023-07-22 16:00

VC市場の市場規模が気になったのでざっくり計算。

VCの売上はEXITと管理報酬の合計。市場規模もこの2つに分けて算出。

まずEXIT。ほぼIPOがメインと仮定。概ね年間100社上場。グロースだけでいうともう少し小さいかもだがここ100社で。

新規上場会社の推移(2008年~2021年)
https://cpass-net.jp/posts/lsd8LhgZ

IPO時にVCは売らないが、IPO時時価総額ベースでEXITすると仮定。50~100億円くらいか。間をとって75億円と仮定。
新規上場会社 時価総額の分布状況


このうちVC側がどのくらい株式シェアをとってるか。投資家側合計で50%くらいと仮定。

ここまでの数字を踏まえて、
EXITリターン=毎年100社IPO×平均時価総額75億円×株式シェア50%×VC側配分率20%=750億円


次は管理報酬側。年間のVCファンド組成額合計は、だいたい5,000億円くらい。

ここのうち2%が管理報酬として配分されるので、

管理報酬=5,000億円×2%=100億円


ここまでまとめると、

国内VC市場=EXIT + 管理報酬
     =750億円 + 100億円
     =850億円

このくらい。ここにM&AEXITも加わるので1,000億円くらい?が実態だろうか。
ここに200社くらいのVCが存在するマーケット。少なくともEXIT側はGP個人に帰属するのでなかなか美味しいマーケット?


参考
https://cpass-net.jp/posts/lsd8LhgZ
https://www.meti.go.jp/meti_lib/report/2022FY/000586.pdf

# by km_g | 2023-06-03 11:04

CVCの財務リターン

 あるCVCが数倍のリターンをあげたと。ファンドビジネスとしてはすばらしい。疑う余地なし。
しかし、これはCVC。ファンドビジネスをECなど一般的な他のビジネスと比較しての業績インパクトは残念ながら、、、の数字だろう。

一方、CVCのもう一つの目的である戦略的リターン。既存事業のバリューアップに貢献したのかどうか。そちらはまったく言及してなかった。M&A一件あったが違う企業へのEXIT。つまり要らなかった企業だった。他はIPO(EXIT)。EXITしたとしても事業部への貢献があったかもしれない。が、ポートフォリオを見てみるとおそらく軽微だろう。大きかったら本体が買収してるはず。株は待ち続けるはず。

グループCEOからしてみると、「この」CVCの意味合いをどう理解したらよいか悩ましいだろうな。

# by km_g | 2023-05-31 18:22


大企業内での新規事業の手段にはいくつかある。
この本を参考に



  • ボトムアップ型、社内ベンチャー制度、社内ビジコン
・これらはたぶん失敗する。難易度高い。理由は
・新規事業立ち上げ経験のある人材が社内にいない。
・(せっかくある)大きなリソースを使う経験がなく、せまい自分のできる範囲でのアイディア提案にとどまってしまう。小さいアイディアばかりに。
・多くの場合、なんでもいいので良いアイディア募集!のように、トップがどのような領域で、どのような予算感覚で、どのようなリソースを許可して事業を立ち上げるのか、方針決めをサボっているケースが多く(なので、ボトムアップ募集、となる)提案の判断軸があやふやで、提案する側が混乱(どんな事業だったら承認するの?)
・承認側もリスク事業の判断苦手。
・一瞬で提案は枯渇する。そしてイベント頼りになる。賞を設けるが本質的にはやはり同じ

どうすればよいか
・「新規」と言ってる時点で黄色信号。トップなりができるだけ方針をクリアにする。
・社内だけの人材にこだわらない。社外の人材もうまく活用する。NEC-Xが事例。VCで言うところのEIR


  • トップダウン型
・基本これが多くの場合良いと思う。なぜか。リソースをかけやすい。ボトムアップの場合、カネ、人員などのリソースを得るために非常に手間のかかる承認プロセスが発生することが多い。ちょっとずつ検証しながら進める。ちょっとでも怪しいと指摘が行われそこがクリアにしなければいけない雰囲気になる。
・が、トップダウンだと最初から一定のリソースを得やすい。

・ただし、そのトップが次の事業を嗅ぎ分ける能力等がないといけない。
・創業社長の企業だとこれがワークしやすいと思う。サラリーマン企業だといくらトップに上り詰めた人でも事業の立ち上げは難易度高いと思う。
・スタートアップバリバリのアントレプレナーに大きな権限を当たるのも難しいと思うが良い作戦と思う。

  • M&A
・これもけっこう良い作戦と思う。しかしトップダウンの方針ありき。
・どういう事業を立ち上げるのか、社内でできないのはどの部分か。その不足するケイパビリティを外部にとりにいく
・方針がクリアであればM&A作戦が一番はやいと思う。
・ただ、注意点はあまりPMIをしないこと。想像以上に大企業のトロイ文化は悪影響を与えると思う。

  • CVC、マイノリティ出資、LP
・要注意。たぶんやめたほうがいい。
・多くの場合スタートアップとの接点がほしい、最新トレンドを追いたい、というもので、前述した大方針がない場合が多い。
・なので、出資したとしてそこからどうするかのイメージがないため、よくわからない連携協議が永遠と続く。
・また、スタートアップ投資になれていない大企業社員が投資実務を行うため、高いバリュエーションを掴まされたりと失敗続きに。
・一方、外部のキャピタリストを採用し、報酬体系も変更し、独立系VC化を進めると今度はシナジーは無視し自分が投資したい財務リターンオンリーの投資を始め、外部からのLPも集めだす。ただのファンドビジネスに。


  • 外部向けアクセラ
・もう少なくなってきたが、アクセラ屋と組んでスタートアップ募集を行うケース。
・あるケイパビリティを募集する手段としては良いと思うが、シードすぎるスタートアップを募集したりとコスパ悪いことをやってるところもあるので注意
・また、VCと連携するケースもあるが、VCは大企業のブランドを使い良い投資をしたいだけの可能性もあるのでそこのすり合わせ、取り決めは丁寧に。



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# by km_g | 2023-02-25 15:25