大企業内での新規事業の手段にはいくつかある。
この本を参考に



  • ボトムアップ型、社内ベンチャー制度、社内ビジコン
・これらはたぶん失敗する。難易度高い。理由は
・新規事業立ち上げ経験のある人材が社内にいない。
・(せっかくある)大きなリソースを使う経験がなく、せまい自分のできる範囲でのアイディア提案にとどまってしまう。小さいアイディアばかりに。
・多くの場合、なんでもいいので良いアイディア募集!のように、トップがどのような領域で、どのような予算感覚で、どのようなリソースを許可して事業を立ち上げるのか、方針決めをサボっているケースが多く(なので、ボトムアップ募集、となる)提案の判断軸があやふやで、提案する側が混乱(どんな事業だったら承認するの?)
・承認側もリスク事業の判断苦手。
・一瞬で提案は枯渇する。そしてイベント頼りになる。賞を設けるが本質的にはやはり同じ

どうすればよいか
・「新規」と言ってる時点で黄色信号。トップなりができるだけ方針をクリアにする。
・社内だけの人材にこだわらない。社外の人材もうまく活用する。NEC-Xが事例。VCで言うところのEIR


  • トップダウン型
・基本これが多くの場合良いと思う。なぜか。リソースをかけやすい。ボトムアップの場合、カネ、人員などのリソースを得るために非常に手間のかかる承認プロセスが発生することが多い。ちょっとずつ検証しながら進める。ちょっとでも怪しいと指摘が行われそこがクリアにしなければいけない雰囲気になる。
・が、トップダウンだと最初から一定のリソースを得やすい。

・ただし、そのトップが次の事業を嗅ぎ分ける能力等がないといけない。
・創業社長の企業だとこれがワークしやすいと思う。サラリーマン企業だといくらトップに上り詰めた人でも事業の立ち上げは難易度高いと思う。
・スタートアップバリバリのアントレプレナーに大きな権限を当たるのも難しいと思うが良い作戦と思う。

  • M&A
・これもけっこう良い作戦と思う。しかしトップダウンの方針ありき。
・どういう事業を立ち上げるのか、社内でできないのはどの部分か。その不足するケイパビリティを外部にとりにいく
・方針がクリアであればM&A作戦が一番はやいと思う。
・ただ、注意点はあまりPMIをしないこと。想像以上に大企業のトロイ文化は悪影響を与えると思う。

  • CVC、マイノリティ出資、LP
・要注意。たぶんやめたほうがいい。
・多くの場合スタートアップとの接点がほしい、最新トレンドを追いたい、というもので、前述した大方針がない場合が多い。
・なので、出資したとしてそこからどうするかのイメージがないため、よくわからない連携協議が永遠と続く。
・また、スタートアップ投資になれていない大企業社員が投資実務を行うため、高いバリュエーションを掴まされたりと失敗続きに。
・一方、外部のキャピタリストを採用し、報酬体系も変更し、独立系VC化を進めると今度はシナジーは無視し自分が投資したい財務リターンオンリーの投資を始め、外部からのLPも集めだす。ただのファンドビジネスに。


  • 外部向けアクセラ
・もう少なくなってきたが、アクセラ屋と組んでスタートアップ募集を行うケース。
・あるケイパビリティを募集する手段としては良いと思うが、シードすぎるスタートアップを募集したりとコスパ悪いことをやってるところもあるので注意
・また、VCと連携するケースもあるが、VCは大企業のブランドを使い良い投資をしたいだけの可能性もあるのでそこのすり合わせ、取り決めは丁寧に。



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# by km_g | 2023-02-25 15:25

大企業の新規事業の取り組みで一番気になるところは、(社内)起業家個人の議論が抜けすぎてるところ。

外のスタートアップ、VCからすると、まずどういう起業家なのか、そして起業家へのリスペクトがある。
が、大企業内の新規事業をスタートアップモデルで立ち上げの取り組みは、仕組みだったり、評価基準の話題がほとんど。

背景にあるのは、誰がこの事業をやるのか、というところの重要性が理解されてないというシンプルな点と、立ち上げる社内起業家が若手で「部下」のような人なので、リスペクトより評価っぽいスタイルになってしまう、というごとだろう。

ここが変わらないと。

# by km_g | 2022-10-15 11:24

CVCの意味

最近CVCの設立が増えている。ただ、その目的通りにワークしているか、するかやや疑問。

まず作る目的は、たぶんこんな感じ。
1:スタートアップとのコネクションを作りたい(投資マネーがあればつながれる)
2:意思決定を早くするために、別組織
3:報酬体系も柔軟にしてイケてるキャピタリストが採用できる
4:事業部のM&Aのきっかけ
5:スタートアップ界隈の最新情報収集

オープンイノベーションなり、スタートアップのイノベーションを取り込む目的としての設定は悪くない。
しかし実際はどうなるか、なっているかというと、

・ベンチャー投資の経験がないメンバーのため、ババ抜きの被害に
・事業部側がどんなスタートアップ、組み方の方針がないため、結局どんなスタートアップ、どんな連携をベースにすればよいか不明で、投資までの意思決定が長くなる(まずは連携をして味見をしてから投資しましょう)
・かといってイケてるキャピタリストを採用すると、ファンドビジネスの方を向きすぎてしまい(財務リターン最大化)、事業部とのシナジーはほぼ気にせず、投資したいスタートアップに投資し、スタートアップ視点になってよい連携先がライバルであればライバルとの連携を進めてしまう
・数兆円の事業規模の会社であれば、10年で100億円のリターンが出たところでほぼ意味がなく、CVC組織はさらに浮いてしまう。

たぶん、こんな感じだろう。

さてどうしたらよいか。何が問題か。

こういうスタートアップ、こういうイノベーションがほしいという事業部側の要望が明確になったとしたら、もはやCVCなど使わなずに自分で探せばよいと思うし探せると思う。そしてwin-winであるならば、エクイティを出さなくても話は聞いてくれるし、連携してくれるはず。なのでその場合はCVC不要。

そういう方針が決まっていない。またはその外のセレンディピティを期待するのであれば、独立しすぎてしまうかもしれないCVCの状態は、しょうがないとあきらめて、事業部から積極的にCVCチームに情報をとりにいかないといけないかもしれない。広くLPするというのも悪くないかもしれないが、おそらくほぼ情報は得られないだろう。

CVCの資金を少なくとも最初は全額事業部が出すはずなので、投資方針や投資基準、戦略はしっかりにらみをきかせられるはずなのでそこはしっかりやった方がよい。
そして、事業部側の目的がセレンディピティにあるのであれば、CVCは、最近はやりの集中投資などせずに、幅広く投資、が良い気がする。

ただ、そういうイケてるVCがとっている、リードをとって集中投資、みたいな方針にあこがれるキャピタリストは採用できないかもしれない。ちょっとかじっただけの人にリード投資のようなスタイル任せてしまうと、それこそババ抜きの被害にあうだろう。

このあたりが難しい。事業部に近いが、ある程度独立性を持たせた組織にして、キャピタリスト経験のある人を事業部側に採用するのが良い気がする。


CVCについてはこの本が勉強になる


# by km_g | 2022-10-13 19:40

VCの顧客は起業家

 VCの競争はどんどん激しくなっている。採用支援、専門家紹介、潤沢なお金などなど。その中で、VCはどう差別化していくのか。普通のビジネスであれば基本だがちょっと忘れがちなのが、VCが気にすべきは、起業家という顧客。起業家が顧客であるということ。

その顧客である起業家に対して、どう差別化するのか、できるのか。どんな提供価値を提供するのか。当然どのVCも考えているだろう。しかし、差別化しているつもりが似たようなアクションになってしまっているところが多い気がする。

そうならないために、これも通常ビジネスの基本だが、顧客である起業家にヒアリングしているだろうか。

違うVCから調達した起業家には、
・うちにたいしてどんなイメージをもっているか?
・なぜうちに一番に声をかけてくれなかったのか?
・なぜうちのオファーより違うVCのオファーを選んだのか?
・投資依頼をするとき何番目に思い浮かべるか?なぜ1番ではないのか?

投資を受けてもらった起業家には、
・なぜうちを選んだのか?
・どこにメリットを感じたのか?
・どこを重視したのか?
・どこと比較したのか?

このヒアリングを意外にやっていない気がする。そこから、自分たちで認識している強み、ポジショニングがその通り起業家に伝わっているのか。もしかしたら意外にどうでもよいと思っていたところを評価してもらってるかもしれない。
その結果を踏まえて、VCの競争戦略、差別化戦略を考えていけば、もう少し色の違うVCが増えてくるかもしれない。


ということを↓の動画を見てふと思った。



この本もご参考





# by km_g | 2022-09-28 18:46

会社の次の柱を作る、という目的であれば、社内新規事業よりも外部スタートアップとの連携、買収が良いと思う。理由は効率。
多くの事業会社もそう思い、いろいろ活動をしているがちょっと遠回りしてる感を感じる。

スタートアップとやらがよくわからない、知らない、会えないということで、アクセラをやっているところを多く見る。自社でアクセラは大変なので、外部のアクセラ屋さんに委託し、ウェブサイトからイベントの仕切りまで数千万円で依頼する(アクセラ屋さんはテンプレだから最初は大変だけど良い商売。)
相手もプロなので立派なイベントになり、スタートアップとの出会いの機会も増えるので良いこともあるが、ただ継続しているところは少ないのがもったいない。
この継続が実は重要。毎年変わってしまっていては、スタートアップとネットワークを作っていけない。外部に委託してもよいが社内のコア担当者はスタートアップと委託業者と一緒にコミュニケーション、戦略ディスカッションに入り込まないといけない。

またCVCも中途半端になりがち。5%程度のシェアで何の意味があるのか。事業連携というVCにはできないバリューアップができるのだから、そして目的なのだから事業連携をするか、M&Aをして支配権をとればよい。なぜそうしないか。事業会社とスタートアップの連携をどう進めていけば、どうすればよいかわからないから。なのでとりあえず出資して関係性をもち、VCの真似事みたいなことをする。なので、バリュエーションのババ抜きにされてしまうことも。

CVCのように、別の法人を作り意思決定速度や、優秀な人材の確保などを実現すること自体は良いと思う。要はストラテジックのところをしっかり考えないと、ということ。あるCVCは「親会社とは独立して、独立VCのようにフィナンシャルリターンを第一に目指します」と言っていた。なんじゃそれは。

# by km_g | 2022-09-06 08:42