WACCは事業の正しいリスクを表しているか?

 企業が投資判断をするとき、IRRやNPV、EVAを用いる。事業は、その事業のCFのリスクに見合ったリターンを上げなければいけない。では、そのリスクはどうやって、誰が判断するか。それは投資家が、判断する。投資家、特に株主は、リスクに見合った価格で株価を取引する。その株価にはCAPMを通じてリスクが組み込まれている。よって、事業のリスクは、株価から測定するのである。

 ただし、ここで注意しなければならないのが、市場が効率的であるという前提の上で、上の議論が成立する点である。十分に情報があり、十分に流動的であって初めて、事業のリスクを反映した株価が形成される。

 過去、日本企業はメインバンク制の下にあった。投資家とは銀行のことであった。同時に株式は持ち合い分を含んでおり、メインバンク以外の投資家にとって、効率的な市場にあるとは言いがたかったと思われる。この場合、事業のリスクに見合った株価はつけられず、つまり、WACCが事業のリスクを表していなかった可能性があるのである。

 企業がメインバンク制から脱却し、直接金融で資金調達する場合、このような状態のまま、IRRやNPVを使って投資判断を行ったら誤った意思決定を行ってしまう可能性がある。非上場企業(将来上場を考えている場合)の場合も同様で、自分の事業はどれだけのリターンをあげる必要があるのかを知るためには、上場企業のWACCを参考にし、上場する前から、ただしいリターン水準を常に心がけている必要がある。
by km_g | 2009-12-02 16:15 | ファイナンス