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買収提案をうけたら TOB

買収提案を受けたとき、何をどう考えればいいのか。いいことなのか悪いことなのか。わかるようでわからない。

■市場はどう見ているか
経営者自身はおいといて、市場はどう見ているかを考える。買収提案を受けた自社の株価が上がった場合、これはどういうことなのだろうか。普通は買収価格まで株価が上昇する。例えば買収提案前の自社の株価が100円だとして、150円で買収提案うけたとする。この時に自社の株価は当然150円付近まで上昇する。なぜならもし140円で買えたら150円で買収企業に売れば10円の儲けがノーリスクで手に入るからである。

まれに、買収提案価格を超えて例えばこの場合155円まで上昇することがある。これはどういう事だろう。これも基本同じ理屈だが、市場が買収価格がもっと上がるのではないか?150円では大多数の株主は買収提案にのらないのではないか。と考えている可能性が高い。

一方、買収提案側の企業の株価も変動する。上昇した場合、下落した場合どういう事なのだろうか。仮に上昇した場合を考える。なぜ上昇するのだろうか。これは、安くお買い物ができたということ。100円で売られていた企業を150円で買収しようとしている。本来であれば、50円の損であるはずだが、これは本来価値が100円ではないのである。実は160円の価値があるものを150円で買った。この差額が利益であり株価上昇の根拠である。下落した場合は単純に高値買いである。

ここまでの議論は、買収側と非買収側で分けて見てきたが、実が2社全体で把握することが重要である。例えば買収側の株価が下落し、非買収側の株価が上昇したとする。これは、買収側から非買収側に富が移転したことになっている。

現実には、買収側の株価も上昇し、非買収側の株価も上昇する場合もある。例えば、

買収企業
株価200円
株式数100枚
時価総額20,000円

非買収企業
株価100円
株式数100枚
時価総額10,000円

2社自社総額合計30,000円

のような時、買収企業側が非買収企業に対し150円(全額現金)でTOBをかけたとする。その時、非買収側の株価が150円まで上昇し、買収側の株価が220円に上昇したとする。この時、その時の株価での時価総額は、

買収側
220円×100枚=22,000円

被買収側
150円×100枚=15,000円

2社時価総額合計37,000円

買収提案の前後で7000円の価値の変化がある。これはなんなのだろうか。(本来であればTOPIXのような市場全体を表す指標からみた実質的な変化で議論しないといけない。例えば市場全体が上昇して、βを通して株価が上昇しているかもしれない。要は、今回の買収提案の実質の効果で議論すべきだということ。例えばこの間でTOPIXが1%上昇したとすると、買収側の株価の変化のうち買収提案の実質の効果は、

220円―200円(TOPIX変化*β+1)

と計算しなければいけない。)

さて、この7000円の意味である。これは、両社が一緒になることで発生しるシナジーの市場評価額である。今回の買収提案によって社会全体の価値が7000円上昇すると思っているのである。つまり評価しているのである。少なくとも市場は。。。


■なぜ買収提案をうけたか
そもそもなぜ自社は買収提案を受けたのだろうか。市場株価が安すぎたかもしれない。シナジーが効かせられるからだったかもしれない。しかし、一言で言うと企業価値を高められる余地があったからである。その可能性の候補としては、

・不効率なコングロマリット
・節税効果の余地
・市場が安く評価してしまっている(IR不足)

などであろうか。企業はポイズンピルなどの買収防衛策を講じる事が多いが、一番の防衛策は企業価値を最大化する経営である。もし、シナジーによってさらに企業価値が上昇するなら買収提案はうけるべきであろう。


■株主以外のステークホルダーのために
自社の株主の観点で言えば、最も高い価格を提示した買収者に売ればよい。というか、そもそも経営者に株主の財産にどうのこうの言う権利などなく、勝手に株主は売るかどうかの判断をすればよい。

しかし、従業員、取引先、債権者、顧客などのステークホルダーはどうか。TOBに賛同した株主は手元の株券が現金化し、終了である。しかし、もし買収者が無理な前提で算定した株価での買収だったとしたらどうだろうか。過剰な負債を抱えぎりぎりまで節税効果を撮り行くことを前提としていたらどうだろうか。うまくいけばよい。景気が悪化し、利息が支払えなくなったらどうなるだろうか。その場合損をするのは、自社の株主以外のステークホルダーと買収側の株主である。

自社の経営者として、買収者の提案内容、価値向上計画を審査する必要がある。本当に価値があがるのか?そのシナジーは実現するのか?具体的にどんなシナジー効果を前提としているのか?短期的利益のために過剰なリストラを前提としていないか?外部にそこまで判断できるのか?を経営者は考えなくてはいけない。

自分の保身は確かに頭によぎるかもしれないが、経営者たるものあらゆるステークホルダーの立場にたって、一番重要なことは何か?どんな意義があるのか?を考えて買収提案を評価したらよいのではないか。
by km_g | 2011-02-13 15:43 | ファイナンス