国際税務

■■二重価格
税率の高さの比較も重要だが、二重税率は避けなくてはいけない。二重課税が生じる例はいくつかある。

ひとつは、居住地国課税と源泉地国課税が競合する場合。片方は、居住者に対して課税し、もう片方は稼いだ場所に対して課税する。これで二重課税になりうる。

二つ目は、移転価格税制関連。そもそも移転価格税制とは、海外との子会社などとの内部取引を利用して、利益または損失を移動させ税率の低い国での利益を増す行為に関する法制度のこと。やりすぎると税務当局から追徴課税をうける。問題は、これが片方の国だけで発生するということである。利益を移動させられ少ない税金しか受け取れなかった国の税務当局が追徴課税を課したとしても、利益を移動させた側(それによって移動させなかった場合より多くの税金払った)から税金を返してもらった追徴課税分に割り当てることはできないのである。税処理は国間で無関係であるから。これによって、二重課税を課せられてしまい大きな損失となる可能性がこの移転価格問題には潜んでいる。

■■外国税額控除
参考:http://nomura-co.dreamblog.jp/blog/36.html
外国税額控除の目的は、国際的二重課税を解消し、企業の海外展開の妨げを解消することである。

例えば。
日本法人である企業が海外で100の課税所得を得たとする。源泉地国で法人税と源泉徴収税(配当、利子送金時にかかる税金)20%支払ったとすると、送金分は80。日本では、その80に対して税率40%の税金32を支払うと、手取りは48。やってられません。

そこで、海外で納めた20を日本で減税してあげましょう、ってのが外国税額控除。これで手取りは、60。ただし、この制度は当然ながら上限は日本の税率分の40。もし海外の税率が50%だとすると、日本国から10だけ持ち出しになってしまう。


みなし外国税額控除というものがある。これはタックススペアリングクレジットと呼ばれる。これは払っていない外国税額を払ったものとみなして日本での外国税額控除を適用できるという制度。上の例の20%の国と日本が租税条約(二重課税の排除や情報交換など)を結んでいたとする。そして、その国では発展途上国で投資を呼び込むために優遇税制を設けている場合を考える。

この場合、現地での100の利益に対しては税金がかからない(または少なくて済む)。送金を受けた日本では通常の40の税金を支払い手取り60。これで、その優遇税制のインセンティブがないものと等しい(優遇税制があろうがなかろうが手取り60だから)。ここのみなし税額控除制度の意味がある。優遇税制がなかった場合、その途上国では20の税金を払うことになっていた。今回これがなかったのだが、20納めたことのするのである。従って日本では、20だけ税金が免除され手取りが80となる。これで優遇税制の効果が残るのである。
by km_g | 2011-06-05 11:30 | MBA他