ベンチャーのバリエーションの方法

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企業価値の評価方法には、DCF法、マルチプル法があるがベンチャー企業の場合は、ちょっと評価方法が特徴的。

・リスク(通常のリスク+不確実性)が極端に大きい、
・ほぼ赤字でありそのままではマルチプルは使えない

と言った点があるからだ。

最近、ベンチャー起業家のセミナーに行くが、資本政策は非常に重要であるにもかかわらず、起業家の方々はあんまり得意でない、ことが多いよう。資本政策とは、資金をどこから、どれくらい、どのように調達するか、ということだ。そこで抑えておかないといけないのが企業の価値計算だ。

下記の表は、投資家側であるベンチャーキャピタルからみた企業価値評価法で、交渉の焦点となるのは、引き渡す株式のシェアである(それと、投資契約)。

まず、必要な数字は(VC目線で)

・投資期間
・投資期間後の予想純利益(EXIT時点での会社の状態)
・投資予定額
・類似企業マルチプル
・ベンチャーキャピタルの要求利回りIRR

の5つである。ベンチャーキャピタルはバックの投資家の意向もあり最高でも10年以内にEXITを要求する。ファンド形成ごすぐに全額投資するわけではないので、投資が決定してからだいたい実質的には5年以内の上場または売却を要求するだろう。その結果、VCは満足のいく利回りIRRを達成しないといけない。

従って、投資した金額がEXIT時点でどのくらいのリターンを生むか、がVC側の基本ロジックである。EXIT時点で自分らの保有株式持分がどのくらいのリターンになるのか、ということである。

EXITの多くは、IPOであるため、EBITDA倍率などではなくPERがバリュエーションの基準となる。売却だったとしても、IPOしたならばこのくらいのはずだから・・・という交渉になるので大企業のM&Aで使われるEBITDA倍率ではなくやっぱりPERで済む。

目標とする、VCが要求すべき株式シェアを計算する流れは、



①EXIT時にVCが要求する価値=必要リターンの絶対額

これは一般的な複利計算を使って算出する。

必要リターン額=投資額×(1+要求利回り)^投資期間



②EXIT時点での全株主価値=時価総額

ここはPERマルチプルで計算する。

時価総額=(EXIT時点での)予想税引き後利益×PER

で計算できる。PERはなるべく類似企業の値を使う。ここで注意しないといけないのは、類似の業種でかつ、その企業がIPOした時点でのPERを使わないと行けない点である。上場時の株価は、情報不足、まだリスクが高い、など、情報開示が十分に行われている上場後しばらく経過した企業とは本質的にPERは異なる。



③要求持分比率=このくらいの株式持分比率はほしい

①がVCが持っていなければいけない株主価値で、②が全株主価値なのだから、その割り算でEXIT時点でのVCが持っていないといけないシェアが計算できる。

今回は、増資が一回だけという前提で計算したが、通常は、数回の増資ラウンドを経て上場する。従って、増資のたびにそれより前の投資家の持分はダイリューションを起こしてしまう。

これを考慮するために、今後どのくらいの資金調達が行われるかを見積もり、ダイリューションしたとしても必要なリターンが得られるように多めにシェアを要求することが一般的である。

これは、起業家にとっても重要な点である。


④投資後の株主価値

目標であった要求シェアの計算はできたが、投資時点での株主価値がここから自動的に計算できる。
要求シェアが計算できたならば、投資額をシェアで割り算すればその時点での全株主価値が計算できる。この株主価値を、Post moneyと呼ぶ。Post moneyから投資額を引き算すれば、投資前の株主価値が計算できる、これをPre moneyと呼ぶ。つまり、

Pre money + 投資額 = Post money

という関係にある。ベンチャー企業がVCから増資を受けた時、Preでいくら?Postでいくら?とか、って会話があるが、このことである。


このような、企業価値の計算方法を特に、VCメソットと呼ばれる。

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最後に割引率について。今回50%という上場企業ではありえない値を使った。割引率は、その企業のユニークなリスクは考慮せず、その業態、業種特有のシステマチックリスクのみを考慮すべき、というのがファイナンスの基本である。であるならば、ベンチャーであろうが、例えば製造業なら大企業の製造業のリスクと異なるべきではないはずである(リスクは固定費比率にも依存するので、本当は、規模でもリスクは異なる)。

しかしながら、リスクには、βで表されるリスク(システマティックリスク)の他に、

・上場できるだろうか、
・売却できない、しにくい(流動性欠如)
・倒産するかもしれない

と言った、不確実性リスクが付きまとう。これは、上場企業にはない点である。ここが利回りにプレミアムを要求される根拠となる。

創業期は大きく、上場近くになるにつれてこれらリスクは縮小していき、最終的にシステマティックリスクに収束する。

VCによって異なると思うが、だいたいで言うと、各増資ラウンドで、

シード期       :50~70%
ファーストステージ :40%~60%
セカンドステージ  :30%~50%
上場前        :20%~35%

と言った具合である。

参考:資本政策VC-method計算アプリ

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by km_g | 2011-11-10 23:53 | ファイナンス