2011年 11月 14日
マルチプル法による企業価値評価
マルチプル法について少し書いた。マルチプル法は、単純であるが現場でも使われており、とても強力な企業価値算出方法である。しかしながら、単純であるがしっかりとファイナンス理論を理解していないと、ちょっとつっこまれただけで破綻してしまう。注意点は以下の点である。
・類似企業の選択
・マルチプルの種類の選択
類似企業の選択
そもそもマルチプルはDCF法を単純化したものである。マルチプルの中身は、CFのリスクと成長性である。つまり、リスクが似ていることと成長率が似ていることを説明すればよい。リスクが似るためには、
・ビジネスモデル、業種
・業界内のポジション
・費用に占める固定費の比率(~規模)
の3点が似ている必要がある(数学的には十分条件だが)。しかし、この3点で類似している企業が見つかる可能性は低い。だいたい、業種が似ている企業を3~5社集めて類似企業群とすることが一般的である。しかし、大きくばらついていて、納得感が薄い場合が少なくない。大きくばらつく理由は、PERであれば特別損失などのノイズが入っていたり、戦っているセグメントが微妙に異なっていて成長率やリスクが異なることが原因である。
そこで解決策としては、以前、利益倍率で書いたように、相関関係から値を推測する方法がある。おおよそ、利益率、利益額、売上規模、などとマルチプルは正の相関があることが多い(理論的にも)。そこで、類似企業の財務数値とマルチプルをプロットしてみると、相関が発見できることがある。これを利用して、バリエーションの精度を高めることができる(だからと言って、点でバリエーションするのではなく、幅でバリエーションすることが大切)。
マルチプルの選択
マルチプルには、
PER
PBR
EV/EBITDA
などいろいろある。これらを全て使って幅でバリエーションすることも考えられるがあまり実務的ではない。バリエーションの目的に沿った方法を使うことが望ましい。例えば、M&Aなどの場合はEV /EBITDAが使われる。理由は、EBITDAという、よりCFに近い値でのマルチプルだからである。なぜより正確であろうDCF法が使われないかというと、企業の価格も相場が重要視され、過去のM&A取引がどのような価格になっているのかを、EV /EBITDAで評価することで、今回もこのくらいの価格が妥当です、と決まるからである。もし、相場EV/EBITDAより高いなら理由が必要となる。
一方、IPOの場合PERが使われる。理由は市場価格がPERでほぼ説明できることが多いからである。一般市場は詳細なバリエーションがしにくく、すぐに入手できる純利益を使ったPERが好まれる(行動ファイナンス的に言うと、そう決まっていると思われているからそうなる)。
というように、いろいろなマルチプルがあるからと言って、全部使うのではなく、バリエーションの目的に沿った方法を選択することが必要である。
点ではなく幅でバリエーション
バリエーション時の最後の注意点として、点ではなく幅、でバリエーションすることが大切である。中央値や平均値で算出することも多く見られるが、最大~最小(大きなはずれ値は除く)の幅でバリエーションすることが重要である。なぜかというと、点でバリエーションしようとすると、例えばM&Aの時などは、交渉相手は有利なバリエーションを当然する。その時、点のバリエーションだと空中戦となり交渉がまとまる可能性が低くなる。それよりも上限と下限をまず同意し、その範囲で交渉を進める方がまとまる可能性が高い。
以前、・類似企業の選択
・マルチプルの種類の選択
類似企業の選択
そもそもマルチプルはDCF法を単純化したものである。マルチプルの中身は、CFのリスクと成長性である。つまり、リスクが似ていることと成長率が似ていることを説明すればよい。リスクが似るためには、
・ビジネスモデル、業種
・業界内のポジション
・費用に占める固定費の比率(~規模)
の3点が似ている必要がある(数学的には十分条件だが)。しかし、この3点で類似している企業が見つかる可能性は低い。だいたい、業種が似ている企業を3~5社集めて類似企業群とすることが一般的である。しかし、大きくばらついていて、納得感が薄い場合が少なくない。大きくばらつく理由は、PERであれば特別損失などのノイズが入っていたり、戦っているセグメントが微妙に異なっていて成長率やリスクが異なることが原因である。
そこで解決策としては、以前、利益倍率で書いたように、相関関係から値を推測する方法がある。おおよそ、利益率、利益額、売上規模、などとマルチプルは正の相関があることが多い(理論的にも)。そこで、類似企業の財務数値とマルチプルをプロットしてみると、相関が発見できることがある。これを利用して、バリエーションの精度を高めることができる(だからと言って、点でバリエーションするのではなく、幅でバリエーションすることが大切)。
マルチプルの選択
マルチプルには、
PER
PBR
EV/EBITDA
などいろいろある。これらを全て使って幅でバリエーションすることも考えられるがあまり実務的ではない。バリエーションの目的に沿った方法を使うことが望ましい。例えば、M&Aなどの場合はEV /EBITDAが使われる。理由は、EBITDAという、よりCFに近い値でのマルチプルだからである。なぜより正確であろうDCF法が使われないかというと、企業の価格も相場が重要視され、過去のM&A取引がどのような価格になっているのかを、EV /EBITDAで評価することで、今回もこのくらいの価格が妥当です、と決まるからである。もし、相場EV/EBITDAより高いなら理由が必要となる。
一方、IPOの場合PERが使われる。理由は市場価格がPERでほぼ説明できることが多いからである。一般市場は詳細なバリエーションがしにくく、すぐに入手できる純利益を使ったPERが好まれる(行動ファイナンス的に言うと、そう決まっていると思われているからそうなる)。
というように、いろいろなマルチプルがあるからと言って、全部使うのではなく、バリエーションの目的に沿った方法を選択することが必要である。
点ではなく幅でバリエーション
バリエーション時の最後の注意点として、点ではなく幅、でバリエーションすることが大切である。中央値や平均値で算出することも多く見られるが、最大~最小(大きなはずれ値は除く)の幅でバリエーションすることが重要である。なぜかというと、点でバリエーションしようとすると、例えばM&Aの時などは、交渉相手は有利なバリエーションを当然する。その時、点のバリエーションだと空中戦となり交渉がまとまる可能性が低くなる。それよりも上限と下限をまず同意し、その範囲で交渉を進める方がまとまる可能性が高い。
by km_g
| 2011-11-14 18:38
| ファイナンス