有利子負債 / EBITDAの意味

 有利子負債は税効果によって企業価値向上に寄与するが、多すぎると倒産の危険性が増してしまう。では、有利子負債はどれだけ多くできるか、適正か、が知りたくなる。危険水域の基準として、インタレスト・カバレッジ・レシオやDSCRがあるが、その中で(純)有利子負債 / EBITDAがある。これは結構好まれて使われる指標で、先日のソフトバンクのSprint買収に関する発表資料でもしきりに使われていた。


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そもそも有利子負債 / EBITDAが何を意味しているのかというと、有利子負債が営業CFに近いEBITDAの何倍か、何年で返済できるのか、ということである。例えば、有利子負債 / EBITDA =5であれば、営業CF5年分、ということである。負債の主な出し手である銀行などは7~10年での返済を好むことから、この値も同程度が望ましいとされている。

しかし、有利子負債 / EBITDA =5 であれば、有利子負債は全力を出せば5年で返済できるかというとそれは違う。なぜなら、設備投資分がEBITDAには含まれていないからである。企業が返済にあてられるフリーキャッシュフローは、営業CFから投資CFを引いた額であり、そもそもEBITDAは税金も考慮していない。つまり、設備投資が多い業態、成長ステージの場合は、有利子負債の上限の基準として、有利子負債 /EBITDAを信用しすぎることは危険である。

下記は、有利子負債 / EBITDA が同じ企業にも関わらず、返済にどのくらいの期間がかかるかを計算した例である。見ての通り、税金、設備投資の程度によって、当然ながら返済期間に差が出る。
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ソフトバンクのSprint買収の話に戻すと、資料にある通り今後投資が必要である。にも関わらず、有利子負債がEBITDAと比較して十分だ、というのは、危険な議論である。おそらく、設備投資を勘案すると有利子負債の額はやっぱり負担が大きいのだろう(ちゃんと財務をみないとわからないが・・)。



by km_g | 2012-10-16 11:35 | ファイナンス