オプション価格とブラック・ショールズ


■オプションとは
ファイナンスで言うオプションとは、ある資産をある価格で買う、または売る権利のことである。資産そのものの価格ではなく、売り買いする権利のことである。特に買う権利のことをコールオプション、得る権利のことをプット・オプションと言う。資産の価格は、DCF法なりから推定できるが、オプションの価格はどのように算出されるか。このオプションの価格を計算するモデルが有名なブラック・ショールズモデルである。

なぜ、こんな小難しい名前のモデルが必要になるかというと、オプションの価値が資産の理論価値ではなく、ある時点の実際の市場の価格に依存するから、だと思う。理論的価値を計算することは解析的に可能だが、市場価格は、バラつきを持ち、具体的な価格を推定することが難しいからオプションの価値計算も難しくなる。

■オプションの価値
そもそもオプションの価値はなんだろうか。オプションがなぜ価値を持つかというと、コールオプションの場合、ある時点で100円の株を90円(行使価格)という市場価格より安い株価で買えるから価値がある。しかし、行使価格が実際の株価より高い場合、そのオプションは無価値である。つまり、オプションの価値とは、

・ある時点で
・実際の資産価格より、行使価格が高い場合、(コールオプションの時)
・その差額の現在価値

ということである。ブラック・ショールズモデルの功績は2番目の株価の算定にある。


■ブラック・ショールズモデル(コールオプションの時)の概要

現在100円の株があったとする。1年後はいくらになっているだろうか。90円かもしれないし、変わらず100円かもしれない。ブラック・ショールズモデルでは、株価は完全にランダムに振る舞うと考える。単調に増加したりはしない。そこで、1年後の株価を確率で表現する。90円となる確率、105円となる確率は、おそらく、100円を中心に対象になる。完全なランダムな場合、この形は正規分布となる(ランダムウォーク)。

次に問題となるのは、正規分布がどのくらいの広さ・幅なのか、ということである。これを決めるのがボラティリティ(=バラつき)と行使期間である。行使期間が長い、または、単位期間あたりのバラつきが大きいほど行使時点で株価のバラつき、正規分布の幅は大きくなる。正規分布の幅が大きくなると、行使価格と実際の株価の差、つまり利益の部分が大きくなる。一方、行使価格より実際の株価が低い可能性もあるが、その時は権利行使しない、オプション価値ゼロとなる。

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行使時点の株価確率分布のうち、株価が行使価格より高くなる場合の確率とその株価の掛け算を積分した値が行使時点で権利行使した結果得られる利益(の期待値)となる。ただし株価は単純にランダムではなく、配当が発生した場合の株価低下を織り込んだ株価である。

行使時点で得られた利益がそのままオプション価値とはならない。その利益が発生するのは未来であるから、割り引く必要がある。その際の割引率は、リスクフリーレートを用いる。

以上から、ブラック・ショールズモデルを構成するのは以下の6つの変数である。

1:現在の株式の価格
2:行使価格(いくらで買う権利なのか)
3:リスクフリーレート(割引率として)
4:配当利回り(配当による株価低下効果)
5:ボラティリティ(バラつきの程度)
6:行使期間(どの時点で権利行使できるか)

ここまでの説明から、6つの各変数がオプション価格に対してどのような影響があるかがわかる。以下の場合にコールオプション価格は上がる。

・行使価格が安いとき
・配当利回りが小さい時
・ボラティリティが大きい時
・行使期間が長い時※

行使期間については、行使期間が短い時には行使期間が伸びるに従ってオプション価格が増加するが、行使期間が十分に長くなると行使期間に従ってオプション価格は低下する。これは行使期間が割引きとしてオプションを減額する効果と、株価バラつきの範囲を拡大しオプション価格増額する効果に関係から生じる。


■ブラック・ショールズモデルの使用例

ボラティリティとは、当該資産の価格の変動率のことである。株価の場合は 毎日の株価変化率の20日分の偏差をボラティリティとすることが一般的らしい。ブラック・ショールズモデルでは、年あたりの値であるから、これを年換算し使用する。

ボラティリティにはヒストリカル・ボラティリティとインプライド・ボラティリティがある。ヒストリカル・ボラティリティとは、当該資産の過去のボラティリティである。一方、インプライド・ボラティリティとは、当該資産の別のオプション価格または類似資産のオプション価格からボラティリティを逆算して算出したボラティリティである。マルチプル法のマルチプルのように算出目的と、状況によって使い分ければ良い。

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by km_g | 2012-11-12 18:33 | ファイナンス