シャープとSamsungの資本提携

 サムスンが経営再建中のシャープと資本提携するとのニュースが入ってきた。

ロイターによると

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シャープ(6753.T: 株価, ニュース, レポート)は6日、韓国サムスン電子(005930.KS: 株価, 企業情報, レポート)に対し、約103億円の第三者割当増資を実施することを決めた。シャープが関東財務局に提出した有価証券届出書で明らかになった。発行価格は1株290円。

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とのことだ。これを受けて、シャープの株価は前日終値299円から341円に高騰した。14%の増加だ。時価総額も3410億円から3890億円にまで回復した。サムスンが投資したのはたった103億円なのに企業価値は400億円も増加した。

これをファイナンス的にちょっと整理してみる。


第三者割り当て増資がされると何が起こるかというと、取得株価によって変わる。もし、増資前の株価より安く価格で株を発行した場合は、希薄化が起こり株価が低下する。増資前の株価より高い価格の場合は逆に株価は上がる。それら変化の度合いは、価格のギャップと増資の規模による。今回は、前日終値299円に対して、Samsungは291円で増資するようだ。つまり若干の希薄化が発生するはずだ。

しかし、これらはBSの右側つまり事業への影響を無視した場合である。増資によって事業価値自体が変化する場合は上の計算にその効果を加えて考えないといけない。今回のその「効果」はどのくらいだろうか。

これは今日の株価を見ると推測できる。今日の終値は341円だった。増資株価より高い。市場は今回の増資によってプラスの効果を期待しているようだ。この効果を含めた増資の前後での株価の関係は以下の通り。


増資発表前株価(299円)*発行済み株式数 + 増資額 + 増資効果

= 増資発表後市場株価(341円) *(発行済株式数 + 増資株式数 )

これから効果が算出できる。計算すると増資効果は497億円となった。市場は今回の増資によって497億円程度の価値創造が期待されてると見ているようだ。

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では、この効果はどこからくるのか。


■事業的効果
シナジーはコストシナジーと売上シナジーに分けられる。コストシナジーはあるのか。R&D、サプライチェーン、など統合するのだろうか。記事を見ていると、液晶パネルの安定供給が提携の中身だと書いてあった。これは、「安定」というところが重要に思う。液晶パネル生産は大きな固定費を必要とする。供給が不安定の場合は二つのデメリットがある。需要が予測より大きかった場合機械損失が発生し、予測より需要が少なかった場合固定費が無駄に発生してしまう。「安定」供給によってこれらデメリットが回避される。

下の図でいうところの、「余剰生産能力の除去」にあたるか。
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■財務的効果
もう一つは、財務的効果だ。増資によって期待される財務的効果は最適資本構成だ。シャープは、自己資本率が10%以下と
倒産リスクが小さくない状況だった。これが増資によって回避される効果だ。しかし、これはほとんどないだろう。シャープの総資産は2兆円程度で、自己資本が2000億円程度だ。今回の100億円程度の増資ではまだまだ不足だと思われる。

つまり、液晶パネルの売上を最大化したいが、倒産が怖くて思い切った投資、生産ができないことで発生していた機械損失が解決される、ことが効果だろうと思われる。
by km_g | 2013-03-06 18:34 | ファイナンス