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楽天のアナリストレポート批判

楽天がモルガン・スタンレーのアナリストのレポートを批判したことが話題になっていた。とりあえず内容を見ると以下の三点のようだ。


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(1) 当社グループではEC、オンライン旅行予約、金融事業等、収益構造が異なる多様な事業を運営しているにも関わらず、当該レポートで用いられている業績予想モデルは、コスト予想をグループ合算ベースでのみ行っているため、事業別の利益分析がほとんどなされておらず、分析が極めて浅い。


(2) 業績予想に用いられた法人税率の根拠が不明である。特殊要因が発生した 2012 年度の実効税率と同水準の 57%を 2013 年から 2015 年の実効税率に適用しているが、その根拠について全く説明されていない。


(3) 株主価値の算出方法がファイナンス理論の観点で誤っている。当該レポートでは、純利益に倍率を乗じた「修正時価総額」に「ノンオペレーティングアセット」を加算して時価総額を算出している。しかし、純利益は金利支払い後の数字であるにも関わらず、「ノンオペレーティングアセット」から借入金を控除している。



(3)がちょっと面白いので復習がてら考えてみる。この方法はPERマルチプルを使っている。純利益にPERを掛け算して算出されるのは株主価値の部分である。なぜなら、(3)に書かれているようにデット側に帰属する支払金利は既に差し引かれているからである。

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問題は非営業資産の部分をどうするか、である。非営業資産とは例えば現預金などのように事業に無関係な資産のことである。事業に関与していないのだから純利益には貢献していない(含まれていない)。このままの株主価値の値はこの非営業資産を無視してしまっている。これを債権者と投資家のどちら側に配分するか、ということが問題になる。債権者には金利分のみを支払うことが契約で決まっているので、それ以外をもらう権利はない。従ってこの非営業資産はすべて株主に帰属するので、前述で計算した結果にこの非営業資産を足し込む必要がある。しかし、このアナリストはこの非営業資産から有利子負債を差し引いて足し算してしまっている。金利分は既に差し引かれているのだから二重である。これが楽天の主張だ。全く正しいと思う。

MBAではこのレベルは普通に習うが、いつも議論となるのは、非営業資産と営業資産の区別である。例えば売却目的の有価証券は明らかに非営業資産だ。問題は現預金の部分だ。単純に考えると現預金は事業に無関係なように思える。しかし、収入は変動するし、震災のようなトラブルへの備えと言う考え方もある。講師によっては、事業の種類にも依るが1カ月分の売上は事業資産と含めるということも聞いた。実務的には現預金はすべて非営業資産とするようであるが。


ところで、今回の件でTwitter上はかなりの騒動となっていた。

・アナリストの良し悪しは市場で決まるべき。企業側がつっこむなんでおごりすぎ
・今回のアナリストのレポートの間違いは明らか。↑の意見も分かるがこのくらいはむしろ企業側は訂正すべき
・楽天の主張は正しいが、アナリストの個人攻撃はやりすぎ

個人的は、3点目に近いかな。よほど態度が悪いアナリストだったかもしれないが。

あと、今回の騒動で思い出したのが、サブプライム危機の時の格付け会社。格付け会社は企業側からカネをもらってるので悪い格付けをしにくい。それがサブプライムローンを多額に保有する会社の格付けを正しく評価することができなかったと。今回の騒動でアナリストがびびって企業側の都合の良い分析結果しか出さないようになっては困る。市場側と企業側は完全に独立しているべきだ。

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黒木 亮 / 幻冬舎


by km_g | 2013-07-06 22:48 | ファイナンス