ソニーのVAIO売却



ソニーがPC事業をPEファンドに売却検討とのことだ。やっとか、という印象。もう少し前であれば、IBMのように事業会社に売却できただろうに、完全に経営ミスだよ思う。実際、PC事業部はこれから何をするのだろうか。まずは、人件費の削減だろう。ソニーではなくなるので、新しく給料を設定しやすくなるのかもしれない。その他に何をするのか。日本産業パートナーズは新しい経営者を呼んでくるのだろうか。天下のソニーに入社した社員はモチベーションを保てるだろうか。

ソニーに限らず、他のメーカーはいわゆるすりあわせが得意と言われている。すりあわせとは、様々な部品などを特定の機種、製品ごとに最適化することだ。そうすることで、機能的品質は最大化される。しかし、コスト増加、管理の煩雑さを招く。機能的品質はどんどん顧客にとって価値を見出しにくくなっている中で、コスト増はさらに目立ってきたし、管理の煩雑さは規模化、グローバル化の弊害だ。

では、どうするか。これについては散々いろいろ言われてきている。顧客ニーズを見ろ、新興国、グローバル化、ハードとソフトなどなど。それらのオプションは今のままでできるだろうか。そしてそれで勝てるのだろうか。アップルにサムスンにグーグルに、台湾企業に勝てるのだろうか。

この本によると、キーワードは標準化と繋ぐ化ということだ。標準化はコスト削減、経営の簡素化(=グローバル化)に効くし、つなぐ化はシーズとニーズのつなぐ化し、顧客ニーズにあった製品、サービスをつくるということだ。

さぁ標準化だ、というと2つの壁がある。一つは担当技術者の存在意義の消滅ともう一つは単純な標準化だけでは勝てないということだ。今、どんでもない機能てんこ盛りの製品がなぜ出来てしまっているかというと、開発段階だけで考えると、各技術者が頑張っているからだ。各技術者とは、軽くする人、ノイズを下げる人、安定化する人、それぞれの技術者が頑張っているのだ。0.1を0.05にすることで、それが成果となり、出世できると思っているしまだそういう評価制度のままになってしまっている。マネージメントは少しこの機能はいらないかも、と思っても長年貢献してきた主みたいな技術者の成果をいらないとは言い難い。また、軽くする人が軽くすること以外のことを今からやれと言われても、これだけ各技術分野が(無駄に)高度化し、専門化されたなかではシフトしにくい。

もう一つは、何を標準化するかだ。標準化の目的はコスト削減、開発スピードアップなどであろうが、果たしてそれで海外企業に勝てるか、だ。たぶんコスト面では勝てないだろう。問いは、何を標準化し、何をすりあわせのままにしておくかだ。各バリューチェーンごとの見極めのためには、非常に高度な見える化が必要になってくる。これが難しい。まず、リソースがない。だれが標準化をやるのか。できるのか。長年高度に専門化を進めた結果、技術者でさえ他の技術分野を把握することは困難になってきている。外部コンサル、マネージャー層にこれができるか。では、担当技術者自身がやるかというと、多品種対応と低リソースで非常に忙しく疲労している。その中で、さらに余計なしかも、技術以外のことをやれと言われてもなかなか進まないだろう。


二点目はつなぐ化だ。今はつながっていないのか。というと先に書いたように機能てんこ盛りになっている時点で真につながってはいない。ではどうするか。これはマーケットinとプロダクトアウトの考え方が必要だ。まずはマーケットin側。マーケットインとは、顧客の望んでいるものをつくるという考え方だ。問題は顧客の望んでいるものが開発側に伝わっていないということだ。アップルのジョブズのように全体を見れる人がいれば、マーケットインだろうがプロダクトアウトだろうが、この問題はおこらないだろうが、それはどの企業でもできるわけではない。問題はリーダーシップだ。何かを決める(機能、製品の取捨選択)ということは、捨てるということだ。これができない。だからVAIOも今までやってきた。(長期的に、本質的にはここを変えないとダメだと思うが)。

残るは現場そうでどうそれを担保するかだ。技術とマーケティングがそれぞれ擦り寄るということだ。今現状は、まず距離が遠い。技術系は少し田舎に建屋があるが、マーケティング機能は都会の本社にあることが多い。もう一つは言語の壁だ。市場の要求を(かっこいいとか手触りとか)を製品仕様、技術仕様に落とし込まないといけない。この上流下流で言語が違う。だから、マーケティングがほっしてるものと違う製品ができてしまう。技術系の企業の場合は、これを技術系の人材が繋ぐ役割を担わないといけない。なぜかというと、技術の深いところはもはやビジネス側の人材では入っていけないからだ。このような人材をなんとか育成する必要がある。

次はプロダクトアウト。プロダクトアウトとは今あるシーズをいかに顧客の望むであろう製品に仕上げるかということだ。多くのメーカーは基礎的な研究所を持っている。ここが特に孤立している。顧客からの孤立と他技術との孤立だ。今までどおりすごく軽くする技術を磨いてきたがこれからはいらないと言われる。そうするとその研究者はその技術を捨てるのではなくヨコ展開を考えようとする。しかし、顧客ニーズなどしらない、わからないので安易な製品しか思いつかない。さらに、部門間の隔たりもありもしかしたら部署AとBが力を合わせれば良い製品ができるかもしれないのに、部署Aだけでなんとかしようと考える。当然行き詰まる。ニーズに近づくために事業部の短期的開発ニーズに答えようとするため、1,2年で成果につながるような仕事をし始める。そして、シーズの蓄積がとまる。また、エンジニアリング的な仕事は研究者はしたことがないので、事業部からは役に立たないと言われる。そして、研究所は閉鎖される。ここでも、部門間、シーズニーズのつなぎ手が必要だ。


今後、VAIOのように事業リストラクチャリングが加速していくかもしれない。しかし、何を(どこを)すて、何に(どこに)集中するのか。何が事業衰退の要因なのか。安易なIT化、ソフト志向に惑わされれず、強みを忘れないでいってほしいものだ。



by km_g | 2014-02-09 12:36 | 日常