強まるROE重視は株価形成をゆがめかねない?


日経がROEを基礎とした株価指標(JPX日経400)を公表し始めている。
判断基準は以下の3点(加重配分)とのことだ。

  1. ROE3年平均  40%
  2. 3年累積営業利益 40%
  3. 時価総額 20%

1点目が新しい点で’効率性’を重視するために導入したとのことだ。また二点目の営業利益は規模を反映するためのものだろう。3点目に時価総額が入っているのがちょっと気持ち悪い。このJPXがなんのために、誰のための数値がよくわからないが株式投資家が対象であれば現在の株価が高過ぎるのか安すぎるのか、適正株価はどのくらいか、ということが知りたいと思うので、だとするとその指標に結果である株価が入ってるのは気持ち悪い。

それはさておき。話題となっているのはやはりROEのところ。ROEはBSの自己資本を小さくすることで短期的に高くすることが容易で、破綻リスクが高い(自己資本が少なすぎる)企業を高評価してしまう、という問題が指摘されている。

しかし、ROEは利益成長を伴わない企業でも、人為的に引き上げることが可能だ。利益剰余金を吐き出して、株主資本をそぎ落とす一方、多額の借入金で事業資金を賄って利益を出せば、理論上はROEがいくらでも大きくなる。たとえ大幅減益でも、減益率より株主資本の減少率が大きければ、ROEは大きくなる。
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まぁ、山崎元さんも書いてある通りというか当たり前だが、重要なのは経営実態であってROEでなくても単一の数値だけでは経営実態は当然わからない。

とは言え、たくさんの企業のフィルタリングとか、マクロ的な分析をする上でいくつかの数値だけで分析したいというニーズはあるはずだ。そこで、例えば今回の経営効率性を判断するための数値として案としてあげたいのは、ROEとROAによる判断だ(数学的に自己資本比率とROEによる判断と等価なのだが)。

ROA =純利益/総資産
ROE =純利益/自己資本
ROA/ROE = 自己資本比率

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・ROEが小さいがROAが高い(自己資本比率が高い)
いわゆる負債ゼロ企業型だ。負債による節税効果をもう少し追求してもよいかも。


・ROEが高いがROAが低い企業(自己資本比率が低い)
これは多くの記事が懸念している自己資本が小さすぎるためにROEが高く見えている可能性がある。


ただし、自己資本比率の高い低いはやはり業種、外部環境によって判断が変わってしまう点は注意が必要だ。例えば半導体企業のように、収益の高低が大きい業種はそれに耐えられるように、自己資本を高目にすることもあるかもしれない。その場合ROEは小さめになってしまう。逆に、鉄道のように安定している場合は自己資本は小さめでもよいかもしれない。少ない指標で企業を判断することは確かに便利だが。簡単だからこそ、その数値の意味を正確に理解してから使わないといけない。





by km_g | 2014-08-24 17:54 | ファイナンス