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 会計の世界では、運転資本とは、流動資産から流動負債を引いた額と定義する。そして流動負債には短期借入金を含むのが普通である。しかし、ファイナンス理論におけるFCF算出の時に出てくる運転資本には、短期であっても借り入れ金(有利子負債)を含めてはいけない。


 なぜなら、FCFとは、事業を行った結果得られたキャッシュのうち、投資家に配分できるキャッシュである。有利子負債は事業を行った結果得られたキャッシュではないから、含めてはならない。もし含めたら、投資家から得たキャッシュを事業から得たキャッシュとしてみなすわけだから、キャッシュフローを過大に、重複して、算出していることになる。だから含めてはならない。


 運転資本とは、日々のオペレーションに必要なキャッシュで、その分は投資家に配分できない。中身は、買掛金、売掛債権、棚卸資産。これらは、取引先に止まっているキャッシュであり、投資家に配分できない。では、現金はどうするか?運転資本に含めてよいか?これは業種によって異なる。日々のオペレーションが安定的であれば、特に現金は必要なく、投資家に配分してよく、不安定であれば、考えられる最悪の場合に必要になる現金は日々のオペレーションに必要だとみなして、運転資本に含める。これ以外の現金は余剰とみなし、事業価値と分けて、評価する。

運転資本=売掛債権+棚卸資産+事業に必要な現金―買掛金


 企業価値を算出するとき、どの程度の現金を運転資本と見なしたらよいか。おそらく、類似業種の売上高現金比率を平均して適応するのが素直だと思われる。


 武田薬品のような多額の現金を保有している企業は、どうみるか。日々のオペレーションに必要な量を明らかに超えている。これは、将来のための現金である。製薬業界は、研究開発費の増大によって、規模の拡大が必須になってきている。武田の多額の現金は、これらの費用か、将来のM&Aのために費用な現金である。
by km_g | 2009-09-28 22:19 | ファイナンス

 ファイナンスで言う価値とは、キャッシュのことをさす。PLで言うところの利益でもなければ、BSの自己資本のことでもない。企業が人なり有形固定資産なりを使って生み出すキャッシュそのものが価値なのであって、その人や資産自体には価値はない。ただし、債権者にとっては、企業が破綻し、キャッシュを生み出さなくなった時、有形固定資産を売却することで、元本を回収するため、資産自体が意味を持ち出す。ただし、売却価格もやはりキャッシュを生み出す能力で評価されるため、結局、資産なり企業の価値は、生み出すキャッシュにある。

 評価方法は、DCF法(WACC法、APV法)、マルチプル(PER,EBITDA、PBR)などがある。代表的なDCF法(WACC法)について書く。

 企業が商品を売ることで初めて顧客からキャッシュを得る。しかし、売上げがそのままキャッシュとして企業が得るわけではない。ステークホイルダーの中でこのキャッシュを分け合う。そしてそこには優先順位がある。PLを見るとこの順位がわかる。仕入先、従業員、債権者、税金(国)、株主。の順番である。株主は一番最後。よって、例えば売上げが減った場合、一番最初に影響を受けるのは株主ということになる。
このような背景があるので、株主には唯一経営に関与できる議決権が与えられているのである。

 財務理論はさておき、企業の価値を算出する場合、債権者と株主にとっての価値を一般的に計算する。計算すべきキャッシュは、仕入先への支払いや、従業員への給与を払った後のキャッシュである。だれにとっての価値を計算するのか、税金は債権者の後、この2点が非常に重要である。

 企業価値=投資家、債権者が得られるキャッシュの現在価値
=仕入先、従業員、国に支払ったあとのキャッシュすべて

 投資家や債権者が得られるキャッシュフローは以下の通りである。

CF(債権者、投資家)= (営業利益 - 支払い利息)(1-税率) + 減価償却費 - 運転資本の増加額 - 投資額

 減価償却費は非資金費用と呼ばれ、キャッシュアウトしない費用であるから、営業利益に足し戻す。運転資本とは、流動資産-流動負債をあらわし、一定期間仕入先にキャッシュを預けている額をあらわす。この分は投資家には配分できない。運転資本額ではなく、増加額なのは、例えば、0年度の売上げのうち、100は売掛金の場合当然、キャッシュから100は引かなければならない。しかし次の年には、売上げの他に、前年度の売掛金が入ってくるのでキャッシュは売上げ+100になる。ただし、この年も、売掛金が100合ったとすると、ここから100引かれて、結局売上げ額がそのままキャッシュにつながる。

 ただし、2年度に売掛金が120だった場合は、売上げ+前年度の売掛金の回収100-今年度の売掛金120=売上げ-20がキャッシュである。つまり、前年度の売掛金と今年度の売掛金の差が重要なのである。

 このような将来にわたって発生するCF(債権者、株主)をリスクに見合った割引率で割り引いた現在価値が企業価値である。

企業価値 = ΣCF(株主,債権者)_i/(1+r)^i

 企業価値を算出する場合の、割引率を特に資本コストと呼ぶ。CFのリスクを評価するのは株主や債権者である。それら合理的な投資家は、CFのリスク(バラつき)に見合った利回りを要求する。そのため、投資家の期待利回りを測定することでCFのリスクを評価することが可能となる。

投資家の期待利回り = 企業が生み出すCFのリスク


 経営者が投資家が期待した利回り以上の利回りを達成しなかった場合、利回りを保とうとする力が働き株価が低下する。よって、投資家の期待利回りrは経営者が達成しなければならない最低限の利回りを表す。これが、rが資本’コスト’と呼ばれる所以である。


 投資家には債権者と株主の2種類がおり、資本コストは、それぞれの期待利回りの加重平均で与えられる。債権者は債権の元本に対して利回りを評価し、投資家は市場で購入した株価に対して利回りを要求するので、加重平均する重みは、債権者側はBSの有利子負債の額そのままD、株主は、時価総額Eとなる。債権者の期待利回りをrd、株主の期待利回りをrEとすると、資本コストは、

資本コスト=D/(D+E)rd + E/(D+E)rE

で与えられる。

 CFのところで見たように、負債を多くすると、課税所得が減り、債権者と株主に配分できるキャッシュの額が増加する。この節税効果の寄与をファイナンスの世界では、CFには含めず、資本コストに含める。数学的にはどちらに含めても答えは一致するが、資本構造による寄与は、資本コストに織り込んでCFは、事業の質のみにする。この方が計算上、後に述べるAPV法でも計算しやすい。

 よって、株主と債権者に配分できるCFは、あたかも負債ゼロで資本はすべて株式で調達したと考えて、

CF(債権者、投資家)= 営業利益(1-税率) + 減価償却費 - 運転資本の増加額 - 投資額
              = FCF(フリーキャッシュフロー)


 と計算する。資本構成に依存しないという意味でこれを特にFCFと呼ぶ。節税効果の寄与は、資本コストに以下のように組み込む。

資本コスト = D/(D+E)rd(1-t) + E/(D+E)rE
= WACC

 これを通常WACCと呼ぶ。よって、企業価値は

企業価値EV = ΣFCF_i/(1+WACC)^i

で算出できる。債権者の取り分は有利子負債の額Dであるから、株主の取り分、つまり時価総額は

EV = D + E

時価総額E = EV - D

と算出される。
by km_g | 2009-09-15 14:28 | ファイナンス

 DCF法は、将来にわたってキャッシュが得られる場合、その異なる時刻に得られるキャッシュを現在における価値に変換する方法だった。この将来にわたって得られるキャッシュをそれぞれ現在の価値に変換した値を現在価値(プレゼントバリュー=PV)と呼ぶ。式で書くと、以下のようになる。

  PV=ΣCF_i/(1+r)^i
 
 問題は、このrとは何か?である。rはリスクに見合った正の値で、割引率と呼ばれ、CFのバラつき(分散)に見合った値が代入される。PVは将来の価値を現在に変換(割り引くと言う)して評価するが、逆に現在のCFを将来のある時点で評価する場合と原理的に等価である。この場合、現在のCFは、何かしらの資産に投資できるわけであるから、一定の割合で増加する。この増加率が利回りである。よって、割引率と利回りは表裏一体である。

 では、’見合った’とは、どういう意味だろうか。リスクが大きい資産の割引率は大きいし、リスクが小さい資産の割引率は小さいが、絶対的にどのように決まるだろうか。

 CFのリスクが最も小さい資産は国債とされている。日本の国債の利回りは1.3%程度であり、どんな資産でもこれ以上の割引率を持つはずである。

 資産Aの割引率rA = リスクゼロの資産の利回り(=割引率)rf + α(≧0)

このαが資産Aのリスクと比例関係にある。

α = rA- rf ∝ リスク
  =k リスク

k = rA-rf/リスク

このkの値はシャープレシオ(=SR)と呼ばれ、市場に存在する投資家が合理的であれば、どの資産でも同じ値となる。kが具体的にどんな値となるかはちょっと不明。ハイリスクハイリターンでもローリスクローリターンでもkは結局似たような値となる。


 
by km_g | 2009-09-14 12:40 | ファイナンス

 ディカウントキャッシュフロー法は、ファイナンスにおいて、価値を評価するための基本となる考え方。ファイナンスの世界では、現在の1万円と未来の1万円を区別して考える。例えば、、現在手元に1万円あったとして、それを国債に投資したと仮定すると1年後には1%程度の利回りを得ることができる。しかし、’今’ではなく、’来年’にならないと1万円が手に入らないとすると、この1%の利回りを享受できないことになる。この設ける機会を失うことをコストと考え(機会費用)、その分未来の1万円を割り引く。この考え方がDCF法である。

 このように、’いつ’キャッシュを得るかによって、その価値が異なるわけであるから、価値とは、時刻とキャッシュの関数になる。同時に、いつの時点で価値を評価するかによって当然異なる。

価値(基準時刻)=f(キャッシュを得る時刻、キャッシュの額の関数)

 この関数fは複利の利回りを使う。上で述べた例で考えると、現在手元にある1万円は、来年には1万100円になっている。よって、’今’の1万円は、’来年’には1万100円の’価値’に相当する。(1+1%)倍になっている計算である。

 これを逆に考えて、’来年’に価値が1万円になるためには、現在手元にいくらあればよいか?と考えると、

現在の価値×(1+1%)=1万円

 これを解くと、約9901円となる。つまり、来年における1万円の価値を現在に変換すると、9901円にしか相当しないわけである。これをちゃんと書くと、関数fは、


価値(現在)=1年後に得られるキャッシュの額/(1+利回り)^1

同様に、n年後に得られるキャッシュの額は、

価値(現在)=n年後に得られるキャッシュの額/(1+利回り)^n

となる。これがDCF法の考え方。
by km_g | 2009-09-11 12:26 | ファイナンス