’価値’と’価格’

あるセミナーで講師が、

価値と価格は違う。

と言っていた。自分は今までこの違いをあまり意識して来なかった。バリエーションするときに企業の価値を計算しているのか、企業の価格を計算しようとしているのか、意識して来なかった。

おそらく、

DCF法で計算されるのは、企業の価値
マルチプル法で計算されるのは、企業の価格

なんだと思う。大切なのは、違う量を計算しているということを意識することだ。だから必ずこれらが一致する必要はない。

企業の価格(株価)は、需要と供給で決まる。しかし、企業の価値は需要と供給とは無関係に、理論的には一意に決まる。結論がずれるのは、将来の見方が異なるから。

企業価値を計算する場合が多いが、自分が価値を計算しようしているのか、価格を計算しようしているのか。誰が買い手か。買い手は何を考えているのか、を理解して計算をすることが重要だ。この価格を知っているのが投資銀行なのだろう。

株価の決まり方を考える上で以下の本が参考になった。

ネット株の心理学 (MYCOM新書)

小幡 績 / 毎日コミュニケーションズ



株価は’人気’で決まる。
by km_g | 2012-10-30 11:54 | ファイナンス

 企業価値の結果は当然変化するが、何が要因で変化したのかを把握するのは重要である。

例えば、

・売上が上がったからなのか
・収益性があがったからなのか
・マルチプルがあがったからなのか

などなど。

企業価値がこれら要因の和で表現されていれば、分析は簡単だ。しかしこれらは掛け算だ。だからどれがどれだけ効いているのかを表現するのは直感的には難しい。要は、掛け算の各因数要因を足し算で表現できればいい。

そこで次のように分解すると足し算の形で表現できる。まず二変数の場合。

T1 = a1 * b1
T2 = a2 * b2

T2 / T1 = 1/T1 *{ ( a2 - a1)*b1 + (b2-b1)*a2 } +1

a1のインパクト : 1/T1*(a2-a1)*b1
a2のインパクト : 1/T1*(b2-b1)*a2

と足し算の形で表現できる。変化量に相手の数を交互に掛け算しているのがポイントだ。もし三変数になったら、

a1
b1
c1

のうち、a1*b1=A1と考えて、A1をa1とb1の要因分解して、合計すればよい。

企業価値の場合(多くは株主価値か?)は、下記のように分解するのが一般的か。分解はそれぞれの場合に分析したい要因に分解すれば良い。

EV1 = 売上高1 * EBITDA1 / 売上高1 * EV/EBITDA1
EV2 = 売上高2 * EBITDA1 / 売上高2 * EV/EBITDA2

倍率 = EV2 /EV1

この要因分析はウォーターフォールグラフで表示するとわかりやすくて良い。ウォーターフォールグラフはExcelで一発で作れないが、積み上げグラフを工夫すればすぐできる。

下記の例で言えば、企業価値増加の一番の要因は、収益性の改善( EBITDA / 売上高)、ということになる。売上も、単価増加と量増加に分けたり、収益性も、粗利益率と販管費率に分けたり、いろいろ仮説次第でどんどん細かく分析すればよい。ウォーターフォール表示しておけば、細かいところをさらに細かく分析することも防げる。企業価値に限らず、この要因分析はいろいろ使えそうだ。

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by km_g | 2012-10-20 12:15 | ファイナンス

有利子負債 / EBITDAの意味

 有利子負債は税効果によって企業価値向上に寄与するが、多すぎると倒産の危険性が増してしまう。では、有利子負債はどれだけ多くできるか、適正か、が知りたくなる。危険水域の基準として、インタレスト・カバレッジ・レシオやDSCRがあるが、その中で(純)有利子負債 / EBITDAがある。これは結構好まれて使われる指標で、先日のソフトバンクのSprint買収に関する発表資料でもしきりに使われていた。


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そもそも有利子負債 / EBITDAが何を意味しているのかというと、有利子負債が営業CFに近いEBITDAの何倍か、何年で返済できるのか、ということである。例えば、有利子負債 / EBITDA =5であれば、営業CF5年分、ということである。負債の主な出し手である銀行などは7~10年での返済を好むことから、この値も同程度が望ましいとされている。

しかし、有利子負債 / EBITDA =5 であれば、有利子負債は全力を出せば5年で返済できるかというとそれは違う。なぜなら、設備投資分がEBITDAには含まれていないからである。企業が返済にあてられるフリーキャッシュフローは、営業CFから投資CFを引いた額であり、そもそもEBITDAは税金も考慮していない。つまり、設備投資が多い業態、成長ステージの場合は、有利子負債の上限の基準として、有利子負債 /EBITDAを信用しすぎることは危険である。

下記は、有利子負債 / EBITDA が同じ企業にも関わらず、返済にどのくらいの期間がかかるかを計算した例である。見ての通り、税金、設備投資の程度によって、当然ながら返済期間に差が出る。
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ソフトバンクのSprint買収の話に戻すと、資料にある通り今後投資が必要である。にも関わらず、有利子負債がEBITDAと比較して十分だ、というのは、危険な議論である。おそらく、設備投資を勘案すると有利子負債の額はやっぱり負担が大きいのだろう(ちゃんと財務をみないとわからないが・・)。



by km_g | 2012-10-16 11:35 | ファイナンス

財務モデル (改)

 債務モデルをいろいろ勉強して少し丁寧に改良した。 今回のモデルは、ある企業をある投資ファンドなどがEquityを買って数年後にExitした場合のリターンを計算することを想定した。しかし、投資判断、バリュエーション、などいろいろ応用は簡単にできるだろう。

改良のポイントは下記。

input と outputを明確にわける
財務モデルに限らず、モデルとは、inputとoutputをある関数でつないで体系化したもの、だ。しかし、財務モデルをどんどん作っていくと何がinputで何がoutputかわからなくなる。あるところをいじったとしてそこがinputではなくある関数で出力されたoutputのセルだったとすると、モデルが壊れてしまうことになる。これを防ぐために単純ではあるが、色で区別する。

input:青
output:黒

この配色は、投資銀行でも使われているらしく、スタンダードといったところ。実際そのルールで作ると結構便利。


なるべく関数ですべてつなぐ
例えば、借入をどれくらいすべきか、できるか、などの分析をするとき、どの年、どのくらい、返済計画、の3つの変数が考えられるが、これらもなるべく関数で表現できるようにする。例えば、sumif関数を使うと便利。


ひたすら見やすく
単純だけど、見やすくする、というのはかなり重要。間違いに気づきやすくなったり、相手に説明しやすかったりたくさんのメリットがある。見やすくする上で気をつけた点は、こんな感じ。

・使用していないところは、線を消す。
・フォントは「Arial」で。
・インデント、斜めを使って色を増やさない



Excelダウンロードはこちら
クリックで拡大
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by km_g | 2012-10-07 22:05 | ファイナンス

 ソフトバンクがイー・アクセスを買収した。LTE競争の劣勢を覆すウルトラCだ。700MHz付近(1GHz以下?)はプラチナバンドと呼ばれ、伝搬効率が良く、最近イーモバイルが割り当てられた

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今回、ソフトバンクはイー・アクセスをすべて株式交換で買収すると発表した。買収条件は、

・すべて株式交換
・全株式買収?
・52000円/株

とのこと。今回の買収を少しファイナンス面から整理してみる。

■買収価格
一株あたり52000円だから、現イー・アクセス株価15000円に対して、3.5倍。としてはいけない。これが成立するのは、現金買収の時。株式交換の場合は、シナジー効果がどれくらいでるか、によってイー・アクセス株主がもらうソフトバンク株式はもはや統合前株式価値ではないからだ。

発表によるとシナジー効果は3600億円と非常に大きな額を見込んでいる。これを信じると、イー・アクセス株主が受け取るソフトバンク1株式の株価は、3359円と統合前の株価3160円より少し高い。時価総額にすると、1900億円程度に相当する。ここからEV / EBIDA倍率を計算すると5.4xとなる。あまり高いとは言えない。もともとのイー・アクセス株価が安かったのだ。


■シナジー効果はどれだけ必要か
上の計算では、プレミアムは

プレミアム(イー・アクセスの株主の利益) = 発表前時価総額 - 買収価格

=1400億円

である。一方ソフトバンク側の株主の利益は、

ソフトバンク株主の利益 + イー・アクセス側の株主の利益 = シナジー効果

より、2200億円程度となる。両社Win-Winだ。しかし、これはシナジー効果が3600億円創造されることが前提だ。では、買い手であるソフトバンクの株主が損をしないためにはどれだけのシナジー効果が必要だろうか。損益分岐シナジーだ。これを計算すると1200億円程度のシナジー効果がないとソフトバンク側は損をしてしまい。その分がイー・アクセス側の株主に移転するだけの取引となってしまう。

■市場の評価
当然ながら、公表後両社の株価は大きく変動した。

・SB 9/28 3,160円  → 10/2 3,195円
・EA 9/28 15,070円 → 10/2 23,000円

両社の株価が上昇したということは、市場が新たな価値を認めたということである。この増加分を計算すると、

・SB  ⊿35円×発行済株式総数=390億円
・EA  ⊿7930円×発行済株式総数=270億円
合計660億円

これが市場が認めたシナジー効果の額だ。イー・アクセスはストップ高だったのでもう少し大きいかもしれない。市場は3600億円もシナジー効果を認めていないようであるが、少なくともWin-Winの良い取引だと見ているようだ。




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by km_g | 2012-10-03 01:56 | ファイナンス