「お金の流れ」はこう変わった! 松本大のお金の新法則

松本 大 / ダイヤモンド社







以前に一回読んだ本だけど、藤巻さんの本を読んでもう一回読んでみた。

以前読んだ時はほとんど内容がひっかからなかったが、今回は全然違う印象を受けた。とても良い本に見えた(それだけ藤巻さんの本がよかったと言うことか)。


・投資のプロと素人の違いは投資にルールを持っているかどうか。そのルールを厳格に守っているかどうか.
・プロは利食いは多めに。損切りは小さめにしている。しかし人間/素人は損切りは遅めに利食いは早めになってしまっている。例えば利食いは15%、損切りは5%と利食いを損切りの3倍くらいにしておくと良い。
・投資のプロは別に素人が得られない特別な情報、情報源を持っているわけではない。膨大な情報をいかにインテリジェンスにつなげるか、がまず違うところ。インフォメーションとインテリジェンスは違う。
・また、一次情報を重要視しているかも大事。新聞、アナリストレポートは川下の情報。誰かの解釈が入っている。そして遅い。業界の自分の知り合い、実際に店に行くとかなるべく川上の情報に近づく。
・情報は多面性が大事。日本の新聞、米国の新聞、ネット、評論家、同じファクトでも重要視してるかどうか、どう解釈しているかが違う。
・価格はお金の量で決まる。価格と価値は直接的には関係は薄い。
・為替は実質金利(名目金利-期待インフレ率)で決まる。(ここは藤巻さんの本よりわかり易かった)。為替は長期の視点を持っていない。なぜなら膨大な流動性(いつでも売り買いできる)を持っているから。長期視点を重視すれば藤巻さんが言うように国力の差が問題になってくるが為替は短期視点。
・ビジネスでもトレーダーでもすごい人、と思える共通点は「好奇心」が強いということ。


本の内容もよかったが松本大という人はとても魅力的だ。前にゴールドマンの人に聞いたが、上に立つ人は能力はもちろんだが人として素晴らしい(今は違う、とも言っていたが)、と。この松本大さんの本なり、ブログを読むとそれがよく分かる。情報に対して素直・謙虚であり、自分で考えていて、現場を重要視していて、専門以外の知識(今回の場合は脳の話とか)があって、仲間を大切にしていて。

どうやったら好奇心を高く持てるか。それはどっかで誰かが話していたが(島田紳助か)、感性を持っているかということが大事だと言う。些細なこと(と思われる)に、心が動くかどうか。喜んだり・怒りがわくかどうか。同じことを言ってるのかも知れないが。

感性を高く保つためには、心がオープンでなくてはいけない。自分の考えを持っていることは大事だが、一歩間違えるとそうではない情報・考えを拒絶しかねない。自信と謙虚ということか。



自分はまだまだだ。


***以下目次****

Chapter1 今、世界の経済はどうなっているのか?

世界で起きている「重要トレンド」

欧米諸国に偏っていた「富」が逆流しはじめた
この先、「情報×人口」という掛け算で経済が伸びていく
人口爆発が生み出した、エネルギー価格の上昇
ものの値段は、本源的価値とは無関係
円高になったのは、実質金利が高いから
臆病なお金は、不安を感じたらどこかへ逃げ込む
日本経済と日本株はこうすれば復活する

日本株の長期低迷の原因は?
「デフレ・円高」を「インフレ・円安」にするべき
マーケットには「目的地」が必要
少子化対策の最初の一歩は「婚外子の差別や不利をなくすこと」
子どもが3人以上産まれたら所得税を5%引き下げたらどうか
復興マネーはどこへ行った?
売買はさかんでも、保有は増えていない現状
銀行はリスクを取るのが本来の役割
ときには大胆な制度設計があってもいい?
割高感が解消された日本株

日本株のバリュエーションは「バブル前夜」並み
日本ほどの好条件を備えた国はない

Chapter2 みんなで動けば、株価は上がる!

お金の意味、投資の意味

お金は「社会財」
今のマーケットから見えるのは「投資家の自信喪失」
欲がないのが気がかり。だが、Greed is good!だ
前傾姿勢になって「世の中の匂い」を嗅ぎ取れ
経済の主役、市場の主役は個人

個人の欲を隠した「犯人」は?
世界一の投資センスを持つ日本の個人投資家
個人の主権をもっと行使しよう
どんなコーポレートガバナンスが望ましいのか

Chapter3 マーケットとのかかわり方

「投資リスク」とどう向き合うべきか

投資の際はリスクに注意
カジノで個人が負けやすい理由
得をしているときと、損をしているときの心理の違い
「プロスペクト理論」が示唆するもの
「ドローバック」で、利益をできるだけ引っ張る
投資上の注意点はまだまだある!
マーケットへの入り方

10人の子どもを、どの会社に入れる?
「お金の行くところ」に先回りしよう
世界が均質化していく中でも生き残るもの

Chapter4 トレーディングの死線は「情報」にあり

大量の情報を使って「遠近感」を得る

1本のニュースは、1本のサーチライトのようなもの
メディアにミスリードされないために
情報は、クルマのハンドルのようなもの
大切な情報は、いつも「現場」にある

インフォメーションとインテリジェンス
「みんなが知っていること」を知るのが大事
川上情報をつかむNRという男
情報の流れには、タイムラグがある
タクシーの窓から「人」と「社会」が見えてくる
アセットアロケーションはなぜ必要なのか

マトリックス・モデルを使って資産配分をする
ブラック・スワンの時代に必要なリスク管理とは
個人はミクロの世界から入ったほうがいい
「運」の正体は?

Chapter5 タフな市場で生き残るために必要なもの

脳をトレーニングする

情報の断片に、どんな「含意」があるのか
「可塑性」という脳の性質
脳の中には「本棚」が並んでいる?
情報マッピングをしている人が、投資でも勝つ
トレーディングも下ごしらえがすべて
不慣れなことは脳を鍛える?
イメージングもトレーニングの1つ
投資脳トレーニングはソロモンで教わった
「ライアーズ・ポーカー」という名の、だましゲーム
成長するために必要なもの

51%の正解率を続けていくと……
ジャンプして進化する
好奇心と、想像力
あとがき「次の10年」へ

by km_g | 2013-07-17 09:21 |

楽天がモルガン・スタンレーのアナリストのレポートを批判したことが話題になっていた。とりあえず内容を見ると以下の三点のようだ。


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(1) 当社グループではEC、オンライン旅行予約、金融事業等、収益構造が異なる多様な事業を運営しているにも関わらず、当該レポートで用いられている業績予想モデルは、コスト予想をグループ合算ベースでのみ行っているため、事業別の利益分析がほとんどなされておらず、分析が極めて浅い。


(2) 業績予想に用いられた法人税率の根拠が不明である。特殊要因が発生した 2012 年度の実効税率と同水準の 57%を 2013 年から 2015 年の実効税率に適用しているが、その根拠について全く説明されていない。


(3) 株主価値の算出方法がファイナンス理論の観点で誤っている。当該レポートでは、純利益に倍率を乗じた「修正時価総額」に「ノンオペレーティングアセット」を加算して時価総額を算出している。しかし、純利益は金利支払い後の数字であるにも関わらず、「ノンオペレーティングアセット」から借入金を控除している。



(3)がちょっと面白いので復習がてら考えてみる。この方法はPERマルチプルを使っている。純利益にPERを掛け算して算出されるのは株主価値の部分である。なぜなら、(3)に書かれているようにデット側に帰属する支払金利は既に差し引かれているからである。

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問題は非営業資産の部分をどうするか、である。非営業資産とは例えば現預金などのように事業に無関係な資産のことである。事業に関与していないのだから純利益には貢献していない(含まれていない)。このままの株主価値の値はこの非営業資産を無視してしまっている。これを債権者と投資家のどちら側に配分するか、ということが問題になる。債権者には金利分のみを支払うことが契約で決まっているので、それ以外をもらう権利はない。従ってこの非営業資産はすべて株主に帰属するので、前述で計算した結果にこの非営業資産を足し込む必要がある。しかし、このアナリストはこの非営業資産から有利子負債を差し引いて足し算してしまっている。金利分は既に差し引かれているのだから二重である。これが楽天の主張だ。全く正しいと思う。

MBAではこのレベルは普通に習うが、いつも議論となるのは、非営業資産と営業資産の区別である。例えば売却目的の有価証券は明らかに非営業資産だ。問題は現預金の部分だ。単純に考えると現預金は事業に無関係なように思える。しかし、収入は変動するし、震災のようなトラブルへの備えと言う考え方もある。講師によっては、事業の種類にも依るが1カ月分の売上は事業資産と含めるということも聞いた。実務的には現預金はすべて非営業資産とするようであるが。


ところで、今回の件でTwitter上はかなりの騒動となっていた。

・アナリストの良し悪しは市場で決まるべき。企業側がつっこむなんでおごりすぎ
・今回のアナリストのレポートの間違いは明らか。↑の意見も分かるがこのくらいはむしろ企業側は訂正すべき
・楽天の主張は正しいが、アナリストの個人攻撃はやりすぎ

個人的は、3点目に近いかな。よほど態度が悪いアナリストだったかもしれないが。

あと、今回の騒動で思い出したのが、サブプライム危機の時の格付け会社。格付け会社は企業側からカネをもらってるので悪い格付けをしにくい。それがサブプライムローンを多額に保有する会社の格付けを正しく評価することができなかったと。今回の騒動でアナリストがびびって企業側の都合の良い分析結果しか出さないようになっては困る。市場側と企業側は完全に独立しているべきだ。

トリプルA 小説 格付会社 上 (幻冬舎文庫)

黒木 亮 / 幻冬舎


by km_g | 2013-07-06 22:48 | ファイナンス