PCR検査がコロナ騒動で一気に世間に広まり、偽陽性、偽陰性、さらに事前確率まで認知度があがった。
ベンチャー投資でこの感度、特異度について少し考えた。

ここでいうベンチャー投資での感度とは、良い投資先を投資できる確率、特異度は投資してはいけないところに投資をしない確率。どちらも高い方がよい。それぞれをあげる施策、そして共存できるか。

感度をあげるために、ソーシング力、意思決定速度の短縮化、リスク回避力・対応力が重要に思う。一方、特異度をあげるためには、しっかりとDDをしてリファレンスをして、確度の情報を獲得していろんな人の意見を聞いて?意思決定する。

共存は可能なのだろうか。できないとしたらどちらにふるべきだろうか。
今のところの仮説は、ベンチャーキャピタル組織、キャピタリストとして成熟するまでは、特異度向上に力点を起き、成熟してきたら感度向上に力点をおくのが良いと思う。

成熟前に感度向上に力点をおくと、悪い意味でバラマキとなり確かにホームランは出るかもしれないが、投資先からのレピュテーションリスク(支援してくれない)、
キャピタリストの未成長、につながってしまい危険。
ある程度成熟したら、キャピタリスト個人の意思決定にまかせ、特異度を維持したまま感度をあげていく。

ポイントは、成果が出るまで(特異度重視)の時期に成功例を出して次のファンド設立、キャピタリストの採用、ファンドブランドの確立を実現できるかどうか。キャピタリストの採用、能力向上にかかっていると思う。








# by km_g | 2020-05-17 22:04


まず、コロナ環境下でのベンチャーファイナンスの状況について。 2020年5月上旬時点。
0:コスト削減は大前提
資金ショートまで残り3ヶ月を切ったら赤信号。人件費にメスを入れる必要がある。そうならないように、いったん事業、開発にブレーキがかかったとしても、資金流出を抑える。

1:ベンチャーキャピタルには大きな影響はない
当然ながら、VCはLPからの組入が完了しており、コロナの影響があるからといって、返せということにはならないし、ファンド期限が短縮されることもない。従って、投資活動に基本的には影響はない。
ただし、投資委員会の開催が遅れたり、意思決定者との面談が遅れたり、などの影響は多少あるかもしれないが、軽微と思う。
一方、ファンド組成中のVCは影響がある。下記で記載するが、事業会社のお財布は絞り出している。その結果、VCへの出資にまわすようなお金はない、ということでファンド組成が遅れることでベンチャーへの投資が止まる、ということはある。

2:事業会社のお財布は絞り始めている
VCとは違い、事業会社のベンチャーへの投資は厳し目になっている。基本的にベンチャーへの出資にまわるお金は短期的には必須ではないため、コロナ環境下で事業の不確実性が高まっているなかで削る対象になりやすい。ただ、全業種というわけではないので、直ちに悲観的になる必要はないと思う。また、投資委員会のような決裁会議の遅延は起きている。

3:コロナを断る理由にされる可能性
「コロナの影響で予算が凍結になった。」たしかにある話だが、本当にそうか、疑った方がよいかもしれない。断る方は気を使うため、コロナは理由にしやすい。自身が投資を得られなかったからと言って、本当にコロナの影響なのか、実は事業、体制などに本質的な原因はないか、を見直す機会を忘れないようにしたいところ。マーケット、製品、強み、体制、資料にしっかりフィードバックをもらう。

4:クローズ時期は広めに クローズできるところからクローズさせる
通所のベンチャーファイナンスでは、時期を決めてそこにスケジュールをあわせてそのラウンドの投資家は基本的にその決められた日に契約締結、払込を行う。しかしながら、特に事業会社が上記のようにスケジュールが遅延するケースが増えている。そのため、強引に間に合わせるようにせかしたり、間に合わないからといって候補から外すことはしない方が良いと思う。
ただし、そのような場合、先に払い込んだ投資家が相対的に不利になるため、事前に先に払い込んでくれる投資家に説明しておく、どのくらいなら同じ条件で新規投資家を迎えてよいか、を確認しておく必要がある。概ね3ヶ月くらいだと思う。
また、株主間契約については同じラウンドであれば、同じ株主間契約契約書を締結することになる。このため、逆に後ろの投資家には先に株主間契約での権利設計について概ね合意しておくことが重要と思う。株価はもちろんのこと、オブザーバー、事前承認条項、ドラッグアロング。最悪、株主間契約を巻き直しをすればよいが、新しい要望も来るケースもあるので、なるべく波風立てずにやりたいところ。

5:フラット株価も
一般的には、1~2年間経過したあとのファイナンスでは、株価を前回ラウンドの2~3倍にあげたいところである。しかしながら、資金調達を確実に行うために、どこかでフラットも受け入れる必要があると思う。
ただし、このとき、前回ラウンドで投資してくれた既存投資家にしっかりと納得して貰う必要がある(前々回の投資家も文句は言うだろうが、それよりも前回投資家)。なぜなら、1年も前に投資したのに、同条件というのは面白くない、と感じるからだ。

6:既存投資家とのコミュニケーションが重要に
既存投資家からの追加出資もしっかり検討。ブリッジ。 少なくとも1年しのげる金額が目安。その際に、しのいだ先にしっかりとバリューアップが実証できるマイルストーンを明確にして、次の資金調達プランをしっかりコミュニケーションする。時期、金額、株価、投資家候補。救済ファイナンスというのは、基本的にしない投資家がほとんどと思う。それは既存投資家も含めて。 なので、しっかりと時期資金調達計画を明確にする。





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# by km_g | 2020-05-11 19:27

資金調達はマイルストーンごとに段階的に行う。資金調達ごとにシードラウンド、シリーズAラウンドなどと呼ぶが、その各段階の事業進捗、調達金額、時価総額はある程度相場観が形成されている。ここからずれることはもちろんあるが、チームが特に良い、顧客の食いつきが良い、など理由がなければ時価総額はあがらない。

最近はバリュエーション感度が比較的ゆるい事業会社がリードをとることがあり、時価総額はあがっている印象。
技術系ベンチャーのフェーズごとのマイルストーン_e0194027_13505615.png
事業化までに必要な金額を多くかかる事業プランの場合には、放出量を多くするか、株価を上げるかしかない。スタートアップ観点で言えば当然株価を上げる方がよい。そのためには、市場規模が大きいマーケットを選択、チームの早期の組成、このあたりが重要に思う。




# by km_g | 2019-12-22 13:56 | VC

事業計画書を見せてもらうことが多いが、聞きたいところは違うんだよな、ということが多い。まず雛形というか、最低限ここは聞かせてね、というところは記載した上でオリジナリティを追加する感じにしてほしいところ。

下記は、その「最低限」。

1.会社の目的、実現したいこと、その理由、あなた自身
・なぜ、この事業・サービスをはじめたのか。やりたいと思っているのか。
・直近の事業の話だけでなく、その先のビジョンも。
・過去にどんな経験があって、今現在に至っているのか。
・あなた自身(チームの説明ではなく)のこれまでの経験もおりまぜて。

2.解決したい課題
・「誰の」「どんな(深刻な)問題」を解決するのか
  なるべく具体的に。写真や動画を使ってもOK。ペルソナも織り交ぜて記載。
  あまり壮大な課題は注意(例えば、医療費増大を解決します!はリアリティがないので注意)。
  どれほど深刻なのか。「あるといい」ではなく「必要」であるか。
  専門性が高い業界の場合は、その問題がなぜ問題なのか、も伝わるように記載する。
・その問題に対して、顧客はどんな対処をしているか
  我慢している(何も対処していない)、は注意。それほど困っていない可能性がある
・なぜ、その問題が今そのままになっているのか?
  最近問題が顕在化したのはなぜ?なぜ、今日までその問題がそのままになっている?
  それほど問題ではない可能性はないか
・顧客も気づいていない問題の場合もある。
・なぜ「今」なのか。
  

3.解決方法、ソリューション、製品
・その解決方法で、顧客・ユーザーの何が・どのくらい・なぜ、改善するのか。
  解決するメカニズムを記載。なぜその方法でその問題が解決されるのか、が伝わるように。ただし、技術に入り込み過ぎないように。
  買ってもらえる、使ってもらえるイメージが伝わるように。
  図や写真、デモ動画(試作品すらない場合は重要。創薬の場合もポンチ絵でも)
・その製品の性能だけで買ってくれるとは限らない。必要条件を満たしているか(コストなど)  
・POC(Proof of Concept)はどの程度済んでいるのか?
・製品・サービスの詳細
  提供価格、コスト
  製品仕様・サービス詳細
  収益がでるか
  導入方法、ステップ

4.トラクション
・既に製品リリースされている場合は、そのトラクションを記載。
・「あなた」「チームメンバー」の前職などでのトラクションも効果的。

5.ユニークな洞察
・VCの人はビジネスプランをけっこうみるので、他とは違う何か、を記載する。けっこうここが重要。課題がユニーク、ソリューションがユニーク、などなど。これがないとそのベンチャーに投資する理由がない、となってしまう。

6.ビジネスモデル
・お金、商品・サービスの流れ
・価格とその理由、コスト
・誰から、どのように収益を得るか
  広告収入、ロイヤルティ、ライセンシング、販売、レンタル、月額
・顧客(収益を得る相手)とユーザーが混乱しやすい場合は注意
・自社は何をするのか(何をやらないのか)
  部品提供、最終製品
  どんなパートナーと組む必要があるのか
・顧客の具体名の例を記載してもよい(~顧客リスト)

7.市場規模、成長性
・ボトムアップの視点を忘れずに。トップダウンだとどうしてもリアリティがなく聞こえてしまう。
  トップダウン「全人口の◯%が・・・」 Total Addressable Market
  ボトムアップ「単価◯円、具体的顧客名・数、地域の積み上げ」 Serviceable Available Market
・国内だけでも数百億円の市場規模(シリコンバレーでは、数千億円?)があることが望ましい。
・金額算出が必須ではない。要は大きいこと・伸びることが伝わるか。
・全体市場とそのベンチャーの商品の市場規模を間違わないように(エンジンの市場規模と自動車の市場規模は違う)。

8.競合との比較
・競合「技術」だけでなく、競合する「ソリューション・解決方法」で比較する。
  その技術を使わない方法もあるのでは?  もちろん、その技術領域の中での比較も重要。
・単純に「差」を説明するのではなく、他にはできない何ができるのか
  「◯◯は高コストだから自社が優位」、で終わらずなぜ自分たちは低コストを実現できるのか、を記載する。
・技術者の視点ではなく、ユーザー・顧客の視点から比較
  ◯◯が高精度に測定できる!高品質!→それが顧客にとってどのような・どのくらいのメリット?
・「競合はいません!」は注意。
  業界のこと本当に知っている?(その場でVCにググられて競合を見つけられたらアウト)
  競合が入ってきていないということ=魅力度がないビジネスでは?
  本当にいない場合はその理由を説明
・知財情報
  出願、権利化済みか
  出願国
  権利者は誰か
  請求項は答えられるように
 
9.チーム
・創業メンバー、取締役だけでなく、コアメンバーも。
・過去、直近までの経歴  「●●年間の業界経験」はぜひアピール。受賞歴、表彰歴
・出会った経緯
・支援者、アドバイザー
・できれば、顔写真も(意外に重要)

10.事業計画
・開発計画と販売計画をわけて記載。
・5年程度で上場、M&Aが狙える水準かどうか。
・マイルストーンを記載する。
 量産化、薬事申請、ファースト・インヒューマン、POC完了、その他KPIなど
 マイルストーンが資金調達のタイミングの候補となる。
 
11.収益計画、資金調達計画
・年ベースの収益計画。概ね5年。(1~2年間分は月次ベースを作成しておく)
・売上が上がるタイミング、黒字化のタイミング
・売上/利益以外にKPIも明記(顧客数、販売個数)
・調達資金
・マイルストーンごとに必要な資金、資金使途
 「まずは、◯◯を実現するために、△△万円調達したい」


最後に、あくまで上記は最低限の内容。大事なのは事業の中身。製品の中身。チームの中身。事業計画書、ピッチ資料を作成することにあまり時間をかけすぎず、事業内容検討、製品開発に時間をかけるのがまず最優先。

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# by km_g | 2019-05-05 00:29 | VC

ベンチャーの失敗要因


The Top 20 Reasons Startups Fail にベンチャーの失敗要因のトップ20が出ている。
トップは顧客がいなかった、ニーズがなかった。という理由。
技術系ベンチャーが特に一番気をつけないといけないところがやはり1位になっている。

投資する際にこのリスクを減らすためには、やはり顧客ヒアリングを多数やる必要があると改めて感じる。

ベンチャーの失敗要因_e0194027_22260576.png


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# by km_g | 2019-02-09 10:49 | VC